Hanacell

Documenta Kassel 16/06-23/09 2007

5年に1度の現代アートの祭典 ドクメンタ12

現代アートって難しい。そう思っている方にも、アート好きの方にもぜひ行ってみてほしいのが、現在カッセルで開催されている「ドクメンタ12」。5年に1度しか開催されない、世界が注目する現代アート最前線のイベントだ。オープニング直後の暴風雨によって中国人アーティストの作品が倒壊するというハプニングに見舞われたドクメンタ12をリポートする。

ドクメンタとは?

「ドクメンタって一体何?」そう思われた方のために、歴史を少し振り返ってみよう。

ドクメンタが生まれたのは1955年、ドイツが第2次大戦後の挫折の只中にあった時代だ。本来ドイツは芸術面で非常に貢献度の高い国だったが、ナチス独裁により国際的なアートの潮流から遠ざかってしまっていた。そんなドイツの人々が再び現代の名作に触れられるよう、近現代の傑作品を 一堂に集めた展覧会が、カッセルの画家で教育者でもあったアーノルド・ボーデによって開催された。展覧会は大成功を収め、その後、テーマを変えて同様の展覧会が約5年周期で開催されるようになる。最初は近現代美術の紹介が中心だったが、やがて世界最新鋭のアートをフォーカスする方針に転換した。5回目以降は、毎回異なるディレクターを任命し、開催ごとに展覧会のテーマや運営をガラリと変えてしまうことで、ドクメンタを常に斬新な前衛的イベントに成長させた。

今日、ドクメンタはイタリアのヴェネチア・ビエンナーレと並び、現代アートの国際展としては不動の地位を占めている。過去に参加したアーティストには、パブロ・ピカソやヨーゼフ・ボイス、日本人では荒川修作や河原温など、現代の巨匠に数えられる作家が勢揃いしている。

作品
左)BÊLA KOLÁROVÁ "Bez názyu z cyklu Nádovil Untitled from Dishes cycle" (1966) ©Bela Kolarova
右)TRISHA BROWN “Floor of the Forest” (1970) © Trisha Brown; photo Egbert Trogemann / documenta GmbH ? VG Bild-Kunst, Bonn 2007

現代アートのテーマパーク

ドクメンタは今年で12回目を数える。過去には最新のアートがクローズアップされ過ぎて難解になってしまったこともあった。しかし今回は、観客が作品にアプローチしやすいよう様々な配慮がなされている。

中でも、アートガイドやレクチャー、映画や青少年向きのイベントなど、アート教育プログラムが豊富で、アートを理屈で捉えるのではなく、自分の心に響く作品に出合った時にどう作品と対話ができるのか、ヒントを与えてくれそうだ。

大人にも子どもにも適したプログラムが充実しているためか、会場には親子連れの姿も目立つ。子どもたちには特に、触れたり、中に入ってみたりできる作品が好評だ。また、映像を扱ったインスタレーションやドラマチックな写真などに見入るカップルの姿、強烈なインパクトを放つ絵画に圧倒されるアートガイドの参加者たち、突如始まるパフォーマンスに驚きつつカメラを構える人々などが見られ、それぞれに作品との出合いを楽しんでいるのがわかる。

ドクメンタ12は、複数の美術館や庭園を会場にしている。美術館で作品を鑑賞するだけではなく、庭園を散策しながらオブジェを眺めたり、会場間の移動中にカフェやショップに立ち寄ってみたりすることもでき、全体が現代アートのテーマパークといった趣もある。

作品
TSENG YU-CHIN “Who's Listening? 5” (2003~2004) © Tseng Yu-Chin

作品
左)AHLAM SHIBLI “Arab-al-sbaih” (2007), © Ahlam Shibli, Courtesy Ahlam Shibli; Max Wigram Gallery
右)Monika Baer “Vampir” (2007), © Monika Baer, photo Jens Ziehe / documenta GmbH, Courtesy Galerie Barbara Weiss

作品から見える私たちの時代

ディレクターにロジャー・M・ビュールゲル氏、キュレーターにルート・ノアク氏を迎え、3年半の準備期間を経て、500点以上の作品を集めた今回の展覧会。特徴は世界中のアーティストの作品を集めただけではなく、古くは16世紀から今日まで、幅広い時代を扱っている点だ。一見すると「最前衛のアートイベントでなぜ?」と問いたくなってしまう構成かもしれない。しかし、あえて国境も時代も超えて作品を集めることで、ドクメンタ12は私たちが生きる時代や世界を浮き彫りにしようとしている。

最新のインスタレーション群の中に数百年前の工芸美術を突如として配したり、近現代の絵画を対比したりすることで、古い時代の作品が新鮮な輝きを放ったりする。また写真や映像の作品からは、文化や政治、宗教など、私たちが生きる世界の多面性が垣間見えるかもしれない。ドクメンタ12は、グローバリゼーション、民族や人間としてのアイデンティティーなど、いまの時代に問われているテーマを凝縮しているとも言えそうだ。

現代アートの表現は無限だ。内容を掘り下げずとも、ただ単純に美しい作品やユニークな作品も多い。リラックスして作品を鑑賞し、何らかのメッセージをキャッチしたら、作品と積極的に対話してみてはいかがだろうか。現代アートの存在が、ぐっと身近に感じられるようになるかもしれない。(Ayako)

会場
左)ドクメンタ・ハレの展示会場 右)アートガイドの風景

会期 2007年6月16日(土)~9月23日(日)
開場時間 午前10時~午後8時
主要会場 フリデリチアヌム美術館(Museum Fridericianum)
ノイエ・ガレリー(Neue Galerie)
ドクメンタ・ハレ(Dokumenta Halle)
アウエ・パビリオン(Aue-Pavillon)
ヴィルヘルムスヘーエ城 (Schloss Wilhelmshöhe)他
入場料 1日券18ユーロ(12ユーロ)
2日券27ユーロ(18ユーロ)
7歳未満無料
インフォ ドクメンタ12お客様サービス(英語・ドイツ語のみ)
Tel: 01805-11 56 11
Fax: 01805-11 56 12
日本語アートガイド予約(日本語可、テキストファイル添付のこと)
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Webste http://www.documenta.de
 
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