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旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

英国ペールエールでビール文化の融合を

ドイツで最も有名な黒ビールといえば、ケストリッツァー(Köstritzer Schwarzbier)だ。下面発酵ならではのシャープなのどごしに、ロースト麦芽由来のビターチョコレートのような香ばしさが漂う。ケストリッツァー醸造所は、ザクセン州ライプツィヒから南東50キロに位置するバート・ケストリッツ村にある。最も古い納税記録は1543年。ドイツ屈指の古い歴史を持つ醸造所で、詩人ゲーテやプロイセンの鉄血宰相ビスマルクなどの著名人もこのビールを好んで飲んだといわれている。

19世紀前半には、ベルリンやフランクフルトまでビールを販売する規模に成長。第二次大戦後は旧東ドイツで国有化されたが、その間も旧西ドイツをはじめ欧州諸国に輸出用のビールを製造していた。ドイツ再統一後は、世界的なビール企業であるビットブルガーが事業を引き継いで販路を拡大。現在では50カ国以上に輸出されている。

その長い歴史の中でも、2014年にリリースされた「Köstritzer Pale Ale」は、ドイツの伝統的醸造所が造る英国スタイルのビールとして画期的だった。ペールエールは、英国で19世紀前半に誕生した上面発酵ビールで、紅茶のような華やかな味わいが特長だ。

一方のケストリッツァー謹製ペールエールは、アルコール度数が7.0%とやや高く、英国よりも複雑で濃密な味わい。熟成感をまとったフルーティーな香りが鼻の奥へと染み込み、続いて口いっぱいに広がるカラメルの甘さ、クローブのようなスパイシーさにうっとり。のどを通り過ぎた後に訪れるホップの苦味も心地よい。マスターブルワーがペールエールを再解釈し、独自の伝統技術で生み出した、まさにドイツと英国が融合したビールだ。2022年には国際的なビールの審査会でも金賞を受賞しており、その味わいは折り紙付き。寒さが残る春先に、胃を幸福で満たしてくれる。

www.koestritzer.de

vol.75
Köstritzer Pale Ale

Köstritzer Pale Ale

 
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