黒い森と自由に包まれた街のビール
ドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州に位置するフライブルクは、スイスやフランスとの国境に近く、黒い森の玄関口として知られる美しい街。その名の「Frei」は「自由」、「Burg」は「城」を意味し、中世には自由都市として商業の特権が与えられていた。
旧市街地には石畳の通りが続き、地形の高低差を活かしたベヒレ(Bächle)と呼ばれる小さな水路が巧みに配置されている。かわいらしい店やカフェが立ち並ぶ通りは、散策にぴったりだ。
また、持続可能な都市づくりのモデルケースとして世界的に注目されている。車の使用を制限し、路面電車やバスの利用を推奨するというエコ志向の都市計画を推進。自転車道や歩行者ゾーンが整備されている。ドイツで最も日照時間の長い都市の一つであることから、太陽エネルギーをはじめとする再生可能エネルギーの活用にも積極的に取り組んでいる。
この環境先進都市フライブルクに深く根を下ろす醸造所が、1865年創業のガンダー醸造所(Brauerei GANTER)だ。地域に密着した家族経営を続け、現在の当主は4代目に当たる。「自由な醸造家」という理念のもと、伝統的な技術と地域産の原料を活かした多様なビール造りに注力してきた。
環境保護にも積極的に取り組んでおり、2030年までの気候中立(温室効果ガスの実質ゼロ)を目標に掲げている。太陽光発電の導入や蒸気ボイラーの更新といったエネルギーインフラの整備に加え、繰り返し利用可能なスイングトップボトルを一部商品に採用するなど、細部にわたって環境負荷の軽減を図っている。
「GANTER Helles Lager」は、飾り気のない正統派ラガー。味わい深いのに口当たりは良く飽きがこない。かみしめたくなるような麦芽の香ばしさが、当地の郷土料理「フラムクーヘン」のパリっとした薄焼きピザ生地の風味を引き立ててくれそう。旅に出たくなる一杯だ。
vol.107
GANTER Helles Lager




インベスト・イン・ババリア
スケッチブック

コウゴ アヤコ
1978 年東京生まれ。看護師を経て、旅するビアジャーナリストに転身。旅とビールを組み合わせた「旅ール」(タビール)をライフワークに、世界各国の醸造所や酒場を旅する。ドイツビールにほれこみ1 年半ドイツで生活したことも。「ビール王国」(ワイン王国)、「ビールの図鑑」(マイナビ)、「BRUTUS」(マガジンハウス)など、さまざまなメディアで活躍中。






