Hanacell

ベルリンの乗り物の歩みを一望

9月の毎週日曜日、クロイツベルクにあるドイツ技術博物館(DeutschesTechnikmuseum)でちょっと珍しい一般公開日があるというので、足を運んで来ました。

壁の建設によって爆破されたアパートの土台部分
歴史的なバスや車、路面電車などが所狭しと並ぶ様は圧巻

この日公開されたのは、同博物館が管理しているDepot と呼ばれる車庫。ここにベルリン交通局が所有する13台のバス、14両の路面電車、4両の地下鉄などが保存されているのです。

博物館と車庫とは1.5キロほど離れており、博物館に行くとシャトルバスが待ち受けていました。1960〜70年代のオールドタイプのバス。当時の制服を着た車掌さんが、切符を売りに車内を見回りにやって来ると、童心をくすぐられる思いがします。やがて到着したのは、橋のたもとにあるレンガ造りの車庫の前。通りからは目の届きにくい場所にあるのですが、中に入ってそのスケールに圧倒されました。

かつてドイツ帝国鉄道の高速気動車の車庫だった巨大なホールに、ありとあらゆる乗り物がぎっしりと並んでいます。最初期の自動車や馬車鉄道に始まり、乗用車、トラック、タクシー、クリーム色が美しい種々のバス、S バーン、地下鉄、路面電車に至るまで、さながらベルリンの交通史を駆け抜けるかのようでした。

ほかではなかなか見られない貴重な乗り物も多くありました。例えば、戦前のベルリンを映した映画によく出てくるボンネットバスや、オペル社の流線型バス、ソ連の国賓用リムジンカー、東独の最高指導者ホーネッカーが狩猟用に使った車、等々。

私が特に感銘を受けたのは、ある1両の路面電車。車内に入ってみると、案内役のおじいさんが「1927年生まれの84歳だよ」というこの電車について説明してくれました。これは1967年10月、シュパンダウとツォー駅を結ぶ西ベルリン最後のトラムの路線が廃止された際走った車両なのだとか。天井には長いロープが張られており、それを引っ張ると「チンチン」という何とも小気味のいい音が鳴ります。当時はこうして降りる際の合図を出したのだそうです。こんな些細なところからも、昔のベルリーナーの生活を感じ取ることができました。

その日見かけた多くの子どもたちのように楽しんでいるうちに、閉館の時間が近付いてきました。車庫の脇に行くと、技術博物館までを結ぶ特別列車が待ち受けていました。戦前は貨物の操車場だった広大な場所に、1本だけ保存用に残された線路の上をゴトンゴトンと音を立てながらゆっくり走る客車。昔の人々が乗り物に託した夢や希望に思いを馳せつつ、雨の振りしきる博物館の裏手に戻って来たのでした。来年も9月に開催予定だそうです。
www.sdtb.de

壁建設50周年の式典に際し、ドイツの各政党から贈られた花束
西ベルリンで最後まで走り続けた路面電車の車内。
本文で触れた天井のロープも見える

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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