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世界で一番小さなオペラ楽団

豪華絢爛なオペラハウスで、歌手やオーケストラはもちろん、舞台美術や衣装までが圧巻のオペラ公演を観て、しばし夢の世界に浸る……それがオペラの醍醐味であることには間違いありませんが、ここドレスデンには世界一小さなオペラ楽団があります。その名は「Operamania(オペラマニア)」。3×4m四方の場所があれば、そこはもうオペラマニアの舞台です。キキこと奥野知美さん(フルート)と、ククことマルティン・ロッターさん(クラリネット)夫妻が、それ以下はあり得ないという人数構成でオペラを演じます。

Operamaniaのキキさんとククさん
Operamaniaのキキさんとククさん

この楽団は、2008年に英オックスフォードで結成されました。設立のきっかけとなったのは「風」です。路上で演奏中、容赦なく吹き付ける強風に煽られ、譜面台が倒れて楽譜が飛び、せっかくの演奏が中断、通りすがりの聴衆が去ってしまうという悲しい経験をした2人は、「暗譜すれば風が吹けども頭の中の楽譜は飛ばず」と発想を転換。そして、立ち去ろうとする親を尻目に、演奏に夢中になる子どもたちのきらきらとした瞳から感じ取った手応えが、結成の原動力となったのです。自分たちでオペラのスコアからフルートとクラリネット用に編曲し、物語もハイライトばかりのダイジェスト版に編集しています。演目は喜劇オペラが中心で、これまでに「セビリアの理髪師」「シンデレラ」「ウィリアム・テル」などを上演してきました。

アウグスト強王の黄金の騎馬像前でキャンペーンを行う愉快な2人
アウグスト強王の黄金の騎馬像前でキャンペーンを行う愉快な2人

私は今回、昨年5月にこのコーナーでご紹介したTOMODACHI Ltd.のサロンで上演された「セビリアの理髪師」を鑑賞しました。日本語とドイツ語の両方を自由自在に操ってのセリフ回しや演技はすでに熟練の域に達していましたが、何よりも素晴らしいのは演奏。知美さんとマルティンさんの息の合った演奏が舞台全体に奥行きを与えます。また、簡潔に役どころを表現した衣装のほか、メガネやカツラなどを駆使して目まぐるしく役をこなしていく器用さも見どころで、この早変わりに伴うドタバタ感が笑いを誘っていました。

今後2人は、サロンや野外劇場、誕生会や結婚披露パーティーといったイベントでの上演のほか、幼稚園、小学校、ギムナジウムでの特別音楽授業などにも活動の場を増やしていく予定だそうです。上演時間は観客の目的に合わせ、30分から90分まで対応可能。「オペラ」の通念を覆すようなオペラマニアの活動は、オペラの斬新な楽しみ方を教えてくれることでしょう。TOMODACHI Ltd.での上演スケジュールおよび演目の詳細は下記ウェブサイトより。

www.mcphase.de/Operamania
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福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/

 
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