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日本企業がりんごの木を寄付

“Streuobstwiesen”という言葉をご存知でしょうか。簡単に言うと、果樹園のある草原。広大な公園や原っぱなどの所々にりんごなど果物の木が生えていて、実が色付く頃になると近所の子どもたちが思い思いにもぎ取って食べている、なんて光景を見たことがありませんか? これはドイツで古くから伝わる伝統事業で、土地の所有者やそれに賛同する個人、会社が資金を出し、果樹を管理しています。

これがこの国の緑豊かな田園風景を守る役割を担っているとも言えるのですが、戦後の経済復興期の頃から減少傾向にあるようです。しかし最近では、2つの意味で見直されてきています。1つは持続的な環境保護につながるという点。植物を増やすということは、野生動物の生息地を守ることにもなります。もう1つは、ここで収穫されたものを商品化することで、ある種の財源になるという点です。現にライン=マイン地域のStreuobstwiesenで採れる多くのりんごが、フランクフルトの名物Apfelwein(りんご酒)を産みだしたと言われています。

日本企業がりんごの木を寄付
各社の名前をぶら下げた木々。
春にはきれいな花を咲かせるでしょう

先頃、この伝統事業に賛同した日本企業2社、ブリヂストン社とブラザー社がフランクフルト・ゼックバッハ(Seckbach)地区のホーエ通り(Hohe Straße)に15本のりんごの木を寄付することを決めました。タイヤで有名なブリヂストンと、事務用機器のブラザー。一見不思議な組み合わせに思われますが、環境問題の観点で共通の考えがあったようです。このイベントの発案者であるブリヂストンのカウツ氏は、「環境に対する取り組みでの2社の連携は、日本企業の環境意識の高さをアピールすることにもなるだろう」と話し、「今後も少しずつ木を増やしていき、将来的に、春には花の咲いた木の下で花見を楽しめるような場所にしたい」と抱負を語っていました。また、この果樹園を管理する組合“Main Äppel Haus Lohrberg”のヴァインリッヒ氏は、「外国の企業が、古き良きホーエ通りの再現に力を貸してくれることに大変感謝しています」と話していました。

昨年12月の良く晴れたある日、りんごの木を植えるセレモニーが行われました。アルペンホルンの演奏が響く中、りんごの木が植林され、2社の名前をぶら下げたりんごの木がホーエ通りの玄関口である草原に並びました。この通りはかつて、フランクフルトとライプツィヒという見本市を有する2つの都市を結ぶ重要な通商ルートでした。その玄関口にあたるこの場所に日本企業の名が刻まれることは、今後日本とドイツを結ぶ道にも何らかの影響を与えるのではないでしょうか。

日本企業がりんごの木を寄付
青空の下、アルペンホルンの調べとともに
セレモニー開幕

石野 あやか(いしの あやか)
ドイツW杯の折に渡独。初めてのドイツ、初めてのヨーロッパの地がフランクフルトでした。昼間から堂々とビールを飲める素敵な文化に魅せられて、1年間の滞在予定が、気がついてみれば3年目突入。こうなったら、次のW杯もドイツで観戦だっ!
 
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