Hanacell

城のある風景

フランクフルト市街から西に約10km、マイン川の北に位置する街、ヘキスト(Höchst)は、工業都市として、またマイセンに次ぐ古い磁器の生産地としても広く知られています。日本語では「ヘキスト」という、なぜか実際のドイツ語の発音とは程遠い名前で親しまれるほど、日本人にも馴染み深い場所と言えます。

ここは今でこそフランクフルト市の一部ですが、1928年まではHöchst am Mainという独立した都市でした。1000年以上の長きにわたってマインツ大司教の支配下に属し、また第2次世界大戦では爆撃の難を逃れたため、戦争で多くの建物を破壊されたフランクフルトとは違った趣が楽しめる街でもあります。ドイツならではの木組みの家々に彩られた旧市街の街並みは、16世紀後半に起きた大火災の後、400年以上その姿を変えてはいません。

青空に映えるヘキスト城の白い塔
青空に映えるヘキスト城の白い塔

そんな旧市街でひときわ目立つ存在が、「ヘキスト城(Höchster Schloss)」です。マイン川のほとりから見上げると、灯台かと見間違えるほど天高くそびえ立つ真っ白い建物がそれです。これまで「ドイツの城=城塞」のイメージが強かっただけに、塔を持つきれいなお城を、しかもフランクフルト市街からちょっと足を伸ばしたところで見られるとは、かなり驚きでした。この城は14~16世紀にマインツ大司教に仕える役人の官邸として使われていたそうです。

この城で毎年夏の訪れとともに始まるのが「ヘキスト城祭り(Höchster Schlossfest)」。54回目を迎えた今年は、6月19日~7月12日の約3週間にわたって開催されました。今回は“Mer rigge zusamme”(英語の結婚“Marriage”に掛けている?)をモットーに掲げ、ヘキストとダルムシュタットにあるズルツバッハ(Sulzbach)の親交975周年を祝うものでもありました。

この2都市の交流は、その昔ヘキストの騎士ボロンガロ(Bolongaro)がザルツバッハのチーズ売りの少女に惹かれたことから始まったそうです。そのため今回のお祭りの目玉は、フランクフルト名物のアップルワインとズルツバッハ名物のチーズ“Handkäse”。この両者に舌鼓を打ちつつ、毎晩のようにお城の前の広場で行われるジャズやロック音楽のコンサートに耳を傾け、ヘキストのにぎやかな夏は過ぎていきました。ちなみに、この“Handkäse”は別名“Handkäse mit Musik”とも呼ばれ、食べると音楽(おなら)が出やすいと言われています。大切な人と一緒に食べるときは気を付けて!

お城から見える木組みの家
お城から見える木組みの家

石野 あやか(いしの あやか)
2006年のサッカーW杯ドイツ大会にタイミングを合わせて初渡独。国内外への交通の便の良さと、ほどよい田舎臭さを併せ持つフランクフルトから離れられなくなっている、ビールと旅行が大好きな不良主婦。
 
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