Hanacell

紫色の祭典 北の港町フーズムを訪ねて

シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の北フリ-スランド地方にあるフーズム市は、北海に面した人口約2万3000人の小さな港街。ハンブルクのアルトナ駅からズュルト島行きの電車で北へ約1時間50分、日帰り旅にちょうど良い距離なので、天気の良い週末はハンブルグからの観光客でにぎわいます。

フ-ズムは、1362年の大洪水によって偶然できた新しい土地に人々が住みつき、栄えていった街です。漁業、商業おけるこの地方の重要な港として発展したのは、たびたびやってきた嵐や大波の影響で、再建を繰り返したことが関係していたといわれています。その洪水と街の発展についての詳しい歴史を知るには、駅から街中に向かう途中にある北フリ-スランド博物館に立ち寄ることをおすすめします。

にぎわう港にぎわう港

フ-ズムといえば、詩人テオドール・シュトルム(1817-1888)の出身地として知られています。北ドイツ特有の暗うつな風土を表した詩「Die Stadt」(街)のなかで、シュトルムはフーズムを「灰色の海辺の街」と表現しています(現在のようにカラフルな家が並び、活気に満ちた港の風景とだいぶ違いますが)。人生のほぼ大半をこの地で生きたシュトルムの家は、現在シュトルム博物館になっています。

教会のあるマルクト広場に出ると、ちょうど週末だったので広場に多くの屋台が出ていました。さっそく噂の名物、「フ-ズム小エビバーガ-」を買いました。にぎやかな広場を通り過ぎ、フーズム城へと続く「城の小道」に入ります。石畳の狭い道の両側には古くてかわいらしい家やカフェ、北フリ-スランドの紅茶専門店が並んでいます。

小エビバーガー6ユーロ……高いっ!小エビバーガー6ユーロ……高いっ!

そして石畳の道の先に……見えてきました! 一面、紫色に染まった庭園。そして紫色のじゅうたんに慎ましく控えているのは「フーズム城」です。この日はちょうど毎年恒例の「クロッカス祭り」。まだ寒い春の初め、けなげに咲いて春の訪れを告げてくれるクロッカスを見に、多くの人々が訪れていました。この庭園にはなんと400万のクロッカスがあるそうです。

こんなにたくさん、一体誰が植えたのでしょうか。15世紀頃、城の庭の一角にあった修道院の僧侶たちが、当時衣類を染める用にサフランを採るために植えたという説があります。ところがびっくり、咲いたのは全部紫色のクロッカス。サフランとクロッカスはよく似ているので間違えてしまい、もちろんサフランは採取できませんでした。僧侶たちはさぞかしがっかりしたと思いますが、その後、この素晴らしい紫色の風景を私たちに残してくれたのだから、全く無駄ではなかったでしょう。

一面紫色のクロッカス!一面紫色のクロッカス!

一面の紫色に囲まれながら、先ほど買った小エビバ-ガーを食べて一休み。帰り際に魚屋さんでこの小エビを買って、フーズムの街を後にしました。この小エビ、かき揚げにしたらもっとおいしそう!

岡本 黄子(おかもと きこ)
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。

 
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