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ジャパンダイジェスト
Fr. 03. Jul. 2020

刑務所での出会いとアートプロジェクト

先日、「Lebendkontrolle:Ich lebe(生存コントロール:私は生きている)」というグループ展に参加したので、レポートしたいと思います。この展覧会では、刑務所に収容されている若者とアートを学ぶ学生が協力し、八つの作品を発表しました。プロジェクトには、ブラウンシュバイク美術大学の9名の学生が参加し、僕はそのうちの一人でした。

ベルリンから列車で北へ向かい、Neustrelitzという街へ。この街にはJVA(Justizvollzugsanstalt)という施設があり、罪を犯した約300名の若者が収容されています。綿密な荷物チェックを受けて中に入ると、まず受刑者たちが育てている菜園が目に入ります。そこを抜けると、学校の教室や職業訓練が受けられる作業場、アトリエなどがありました。スポーツ場の横には、ウサギやウマ、ニワトリの小屋も。

刑務所の外観刑務所の外観

プロジェクトを指揮するのは、ブラウンシュバイク美術大学の客員研究員であるドレーン・ユグチさん。アート作品の制作を通して、刑期が明けるのを待つ若者たちが社会参加するきっかけを、また学生と受刑者の双方に学びの機会をつくることに主眼があります。このプロジェクトの実現に向けて刑務所側も積極的に協力し、4日間のワークショップが始まりました。

まず、写真、デザイン、パフォーマンス、映画などを専攻する学生たちのグループが、それぞれのプロジェクトを紹介し、興味を持った若者たちとマッチングしていきます。僕たちのグループは「手紙」をテーマにした短編映画の制作を提案したのですが、自分のニックネームを「König(王様)」と名乗る一人の若者が関心を持ってくれました。

刑務所での撮影には、警備の観点からさまざまな制約が付きました。それに加えて、最も配慮せねばならなかったのは、受刑者のプライバシーを守ること。そのため撮影できない部分は絵を用いながら、制作を進めていきました。

僕たちは、時にコーヒーを飲みながら他愛もない話をしました。Königがドイツのテレビで再放送されている、「風雲! たけし城」という日本のバラエティ番組が好きだと言っていたのが印象に残っています。また休憩時間には、よく「忍者」という遊びをやりました。そして最終日、Königが彼の暮らす部屋を案内してくれることに。ベッドやテレビが置かれた、8畳ぐらいの個室……僕だったら何をして過ごすだろうかと考えました。

美術大学でのグループ展の様子美術大学でのグループ展の様子

刑務所を訪問する前は緊張と不安で胸がいっぱいだったのですが、出るときには寂しさとほっとした気持ちが入り混じっていました。後日、刑務所で撮影した素材を編集し、これまでに二つの作品を発表。現在は、3本目を制作中です。Königとは、その間も手紙のやり取りを続けています。先日、彼から返事が届いてうれしい気持ちになりました。

国本隆史(くにもと・たかし)
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
takashikunimoto.net
 
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