ドイツに移住してから、ヨーロッパ・アクション・ウィーク「チェルノブイリとフクシマ後の未来のために」というイベントに毎年欠かさず参加しています。今年は2月4日〜7月5日に、ドイツ各地でチェルノブイリと福島の原発事故をテーマにさまざまな催しが開かれています。僕が住んでいるブラウンシュバイク近郊では、プロテスタント教会や財団がエネルギー転換と気候保護をテーマとしたコンサートや講演会を開催しており、そこから二つの催しをレポートします。
チェルノブイリの原発事故について話すウクライナの女性
まずは、4月26日にザルツギッターで実施された「Andacht am Lutherbaum」(ルターの木での祈り)です。2017年にルターの宗教革命500年を記念して、ザルツギッターのドイツ連邦放射線防護庁の前にサイカチが植樹されました。そこで毎年、チェルノブイリの原発事故が起きた4月26日に、犠牲者を追悼するミサが行われています。今年はウクライナからドイツに移住した女性が原発事故の経験について話した後、コンラッド鉱山の情報センター所長が登壇しました。ザルツギッターのコンラッド鉱山では、19世紀以来、鉄鉱石が採掘されてきましたが、2027年からはその跡地が低中レベル放射性廃棄物の最終処分場として操業される予定です。しかし多くの地元住民からは不安の声が上がっています。春の日差しの中、放射性廃棄物の最終処分を担当する会社の職員と住民が対話する姿が印象的でした。
「ルターの木」のもとで
日本政府は今年2月、再生可能エネルギーと共に原子力を「最大限活用」していく方針を示しました。一方で、福島原発の廃炉、および放射性廃棄物の最終処分地については、まだ全く目処が立っておりません。福島第一原発事故後は、首相官邸前で数万人が集まるデモが行われましたが、あれから14年がたち、再稼働を肯定する声も増えてきています。またドイツでは、2023年に国内の全ての原子力発電所を停止しましたが、高レベル廃棄物の最終処分場については選定作業が続いています。
ジャーナリストである桐島瞬さんの講演
4月28日には、日本から来独したジャーナリストの桐島瞬さんが、ヴォルフェンビュッテルの教会で講演しました。桐島さんは、福島原発の事故後に現場作業員として9カ月働いた経験があり、その実体験を含めて、福島原発の廃炉作業について話しました。講演後は、放射性汚染水の海洋放出、汚染土の土木工事への活用、メディアでの報道のされ方、再稼働についての国民の反応について、聴衆から途切れぬことなく質問が寄せられました。20名ほどの会合でしたが、全員が年配の方々。桐島さんはその翌日にもブラウンシュバイクで講演をしました。うちの子ども(13歳)と一緒に参加しましたが、やはり参加者の年齢層は高かったです。次世代に残す負担をいかにして軽減できるのか、人種、世代、立場を超えて、話し合っていかなければならないと、あらためて思いました。
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
takashikunimoto.net