3年ぶりに日本へ一時帰国し、ドイツに戻ってくると、庭に小さな黄色い実がたくさんなっていました。7月初旬の日本は梅雨でむしろ涼しかったのですが、中旬以降は蒸し暑い夏がやってきました。それと比べると、ドイツの暑さはいくらかましに感じます。
久しぶりに雑草が元気に成長している庭をのぞくと、ミラベル(Mirabelle)の木に黄金色の実が熟し始めていました。このミラベルは日本ではあまりなじみがありませんが、小さな黄色いプラムのような果実で、ドイツではスーパーやマーケットなどで見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。旬は7月から8月にかけての3~ 4週間程度と、収穫できる時期も短いのですが、特別な世話をしなくても、季節が来ればミラベルの木は実を付けてくれます。優しい甘みで、朝に摘んで食卓に置くのがこの季節の小さな楽しみです。
庭の木で黄金色に熟し始めたミラベル
現在、僕が住んでいる家は、1651年に建てられた古い家です。10年前、新しい家族が増えるタイミングで、市内の小さなアパートからこの家に引っ越してきました。家の中はリノベーションされていますが、柱は木、壁は土壁。泥やわらなどの古い素材で作られた壁は少し不均一で、何度も修復された跡が残っていて、平らではない床にビー玉を置けばどこまでも転がっていきます。天井は低く、身長170センチの僕でも手が届きそう。昔の人々の暮らしを感じさせる家です。
近所には馬を飼っている人も多く、のどかな風景が広がる
家のある地域は、川沿いの好立地を生かして集落が発展してきたことが見て取れ、旧石器時代から人々が定住してきたことが分かります。僕が暮らし始めてから新しい住宅地も増えて、周囲に残っていた古い家屋も少なくなっています。それでも、少し歩けば古い農村の景観を今でも見つけることができます。1974年にブラウンシュバイク市に編入されましたが、村落として1000年以上の歴史がある地域です。
夏になると勢いよく伸びる雑草。庭の草むしりもひと仕事
初めは数年のつもりで日本から移住してきたのですが、気が付けばドイツに住んで14年。その間に子どもが三人になり、家族の暮らしもすっかりここに根付きました。少なくとも子どもたちが学校を卒業し、それぞれ独り立ちするまでは、ドイツで暮らしていこうと決めています。14年は長いようにも思えますが、1000年以上続く集落の時間に比べれば、ほんの短い時間です。これまで何家族もの暮らしを守ってきたであろう家に住み、今年もまた庭のミラベルを摘みながら、人間が感じる時間と、家や木が刻んできた時間には、大きな違いがあるのだとあらためて感じました。
神戸のコミュニティメディアで働いた後、2012年ドイツへ移住。現在ブラウンシュバイクで、ドキュメンタリーを中心に映像制作。作品に「ヒバクシャとボクの旅」「なぜ僕がドイツ語を学ぶのか」など。三児の父。
takashikunimoto.net



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