Hanacell

跡形もない忘却への抵抗をテーマに平和を願う芸術の巡回展

核兵器廃絶を訴える展覧会「50の都市、50の跡」が5月8日から28日までハノーファー市庁舎で開かれました。5月8日は第二次世界大戦におけるドイツの敗戦日であり、ファシズムからの解放日と位置付けられています。この日ハノーファーでは市長が戦没者の墓地に献花し、その後展覧会の開幕式となりました。

開幕式で日本の歌を披露する女性合唱団
開幕式で日本の歌を披露する女性合唱団

作品は、シュトゥットガルトの芸術家クラウディア・ディーテヴィッヒさんによるもの。世界各国の平和首長会議加盟都市の道路(アスファルト)を写真に撮り、特別な方法で処理し、アルミニウム板に印刷しました。展示された50の作品には、さまざまな色や模様が浮かび上がっており、想像力を駆り立てられます。

芸術家クラウディア・ディーテヴィッヒさん
芸術家クラウディア・ディーテヴィッヒさん。左の作品は広島で撮影したもの

平和首長会議は2020年までの核廃絶を求めて1982年に広島市長によって創設され、現在は163カ国で7500以上の市町村が加盟しています。今年は1968年に核不拡散条約が結ばれてから50年となる節目の年とあって、50の作品を展示。平和首長会議は2020年までの核廃絶を求め「都市は攻撃対象ではない」とアピールしていることから、展覧会は各都市の「跡」を集めて「跡形もない忘却への抵抗」の象徴とすることで、核廃絶を訴えています。2018年から2020年にかけて世界各国の平和首長会議の加盟都市で巡回展が計画されており、すでに昨年、広島や長崎でも関係者に披露したといいます。

作品は魚やコップ、悪魔、人の胴体に見えるものまでさまざま。広島、長崎、東京での作品もありました。ディーテヴィッヒさんは80年代から戦争や核兵器反対運動に参加しており、「芸術を通して、平和首長会議の活動を支援したい。平和を願わない人はいない。そのためにみんなが動かなければ」とアピールします。

また開幕式ではヴォルフガング・シュルップハウクさんが、金属の玉を一つ落とし、「これが第二次世界大戦での核兵器の音」と披露。参加者は、広島や長崎を思い浮かべながらカチリという音に耳を澄ましました。続いて「これが現在、全世界にある原爆の音」と1000以上の玉を上から落とすと、その音の大きさに皆びっくり。改めてどれだけ多くの核兵器があるか実感しました。シュルップハウクさんは翌日高校生と平和のワークショップをするなど、若者の平和への意識を高める活動をしています。

ハノーファー市は平和首長会議の副会長であり、昨年ICAN平和ノーベル賞受賞式に合わせて市庁舎で催しを開くなど、平和について多彩な活動を行っています。平和首長会議にはドイツでも550以上の自治体が加盟しており、今年の同会議総会はミュンスターで6月14日に開催されました。

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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