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洪水の歴史が垣間見えるパルムガーテン堰

ドイツで有名な川といえば、ドナウ川やライン川でしょうか。ライプツィヒにはそのような大きくて有名な川は流れていませんが、市民の憩いの場となっているクララ・ツェトキン公園沿いにはヴァイセ・エルスターという川が流れています。

この川には、多くの橋がかかっています。その中でも「ザクセン橋」という公園の中のメインストリートにある橋には、晴れている日はたくさんの人が集まります。暖かい時期には、ここで夜通しラテンの音楽で踊ったり、歌ったり、時にはコンサートやイベントが開かれることも。暗くなると公園の中には灯りがないので、そこから音楽が聞こえてくるのはとても不思議な感覚です。

パルムガーテン堰からの眺めパルムガーテン堰からの眺め

今回ご紹介したいのは、そんなにぎやかなザクセン橋からもう少し北上したところにある「パルムガーテン堰(せき)」です。これは川を渡るための単なる橋ではなく、川の流れ、そして水量を一定に制御する堰としての役割も担っています。1915年に完成し、今では歴史を後世に伝える建造物として、ライプツィヒの保護建物の一つにもなっています。

今から150年以上前、ヴァイセ・エルスター付近では毎年のように洪水が発生していました。1909年2月には大洪水が発生し、これをきっかけにして、長年議論されていた洪水を食い止めるための工事が始まります。1913年には人工川「エルスターベッケン」の建設が開始。そして、この人工川の建設に伴ってパルムガーテン堰の建設も始まったというわけです。今では想像できませんが、エルスターベッケンができるまで、かつてそこには広い牧草地が広がっており、草原には小さな池がいくつも点在し、木や灌木が生い茂っていたようです。また現在のライプツィヒでは降水量もほかのドイツの地域に比べると少ないので、かつて頻繁に洪水が発生していたというのは驚きです。

今の時期は紅葉もきれいです今の時期は紅葉もきれいです

この堰は一見すると普通の橋なので素通りしてしまう人も多いのですが、橋が近づいてくるにつれて滝が流れるような音が聞こえてきます。そこで橋の上から覗くと、まさに小さな滝のように水が段々になって流れています。とても大きいわけではないのですが、初めて見たときは圧巻でした。また晴れている日にはきれいな夕陽を見ることができます。周りに大きな建物が無く、川が広がっているだけなので、美しい空のグラデーションを楽しめますよ。

普段なんとなく散歩をしている道に、実は面白い歴史が詰まっているかもしれません。これからドイツはどんどん寒くなっていきますが、そんなふうに歩く楽しみを見つけられると、外に出やすくなるかもしれませんね。みなさんも温かい飲み物を片手に、たまにはちょっと遠くまで歩いてみてはいかがでしょうか? 

福田 真子(ふくだ まこ)
東京都出身。日本で陶芸を勉強した後、2019年からライプツィヒ在住。現在はライプツィヒの大学で博物館学を勉強しながら、ウェブマガジン「ヴァルナブルな人たち」を運営している。
https://vvulnerablepeoplee.wixsite.com/website/magazine
 
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