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エネルギー循環型の住まいの改修

1990年に東西ドイツが統一した際、それまで市営だった住宅供給公社「ライプツィヒ住宅建設協会(Leipziger Wohnungs- und Baugesellschaft mbH=LWB)」が民間企業として新たなスタートを切りました。現在、市内に3万5000戸以上の住宅を抱えるLWBは、不動産の賃貸だけでなく、空き家物件の販売や老朽化した建物の改修事業を請け負っています。

その一例が、市の中心部から徒歩10分程の場所にあるクロイツ通り団地地区。1985~86年に掛けて、ここにはプレハブ工法によって1058戸の住戸が建てられました。建設から20年以上が経過して建物の老朽化が進んだため、2009年から改修工事が進められています。昨年末までに438戸が改修され、全エリアの改修工事は2017年に完了予定です。ここには建設当時から住んでいる住民も多いことから、高齢化や、ほかの地域に比べて家賃の安い東側に位置するために移民や社会的弱者が集中していることが問題視されています。

クロイツ通り団地地区の改修待機中の棟
クロイツ通り団地地区の改修待機中の棟

そこでLWBは、単に建物の老朽化を防ぐための改修工事ではなく、「エネルギー循環型の改修モデル地区」としてこの地区の再生に取り組んでいます。全エリアを5つに区切り、ソーラーパネルを設置する棟、外壁と地下天井に断熱材を採用する棟、配管設備を新しくする棟、外壁コンクリートパネルの目地補修と外壁塗装の塗り替えを行う棟など、それぞれ目的の異なる改修を段階的に実施。改修前後の光熱費を比較して住民に改修のメリットを説明し、彼らの声を次の段階の改修に反映させています。これらの取り組みが評価され、2009年には連邦交通省から「統合地域計画における団地地区のエネルギー循環型改修事例」として銀賞を受賞しました。

外壁コンクリートパネルの目地補修と外壁塗装が施された棟
外壁コンクリートパネルの目地補修と外壁塗装が施された棟

現在、3万4000戸の空き家を抱えるライプツィヒですが、クロイツ通り団地地区のエネルギー循環型改修に対する市民の反応は上々で、空き家がほとんどない状況です。LWBが行った住民アンケートによると、市の中心部に近いため自家用車を所有する人は少なく、ほとんどの住民が駐車場よりも駐輪場の設置や中庭の整備を希望しています。そのため、各ブロックの中庭には音・視覚・エネルギーなどのコンセプトの下で作られた遊具を設置。子どもたちが安心して遊ぶことができ、住民たちの憩いの場となるよう、緑を多く取り入れています。また、各中庭は住民以外の人も立ち入ることができるオープンスペースとなっています。

LWBはエネルギー循環型の住まいの改修以外にも、赤ちゃんがいる家庭におむつ配給サービスを提供するなど、住民が快適に住み続けられるよう、住まいのサポートを行っています。
www.lwb.de

ミンクス 典子
福岡県生まれ。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の建築設計事務所に所属し、10年に「ミンクス.アーキテクツ」の活動を開始。11年よりライプツィヒ「日本の家」の共同代表。www.djh-leipzig.de

 

 
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