ジャパンダイジェスト

ヴァイオリン職人を目指して 河合七海さんの3年間

バイエルン州では、7月は卒業の季節。卒業試験を終え、学生たちがほっと一息つける時期でもあります。山仲間であり私の友人でもある河合七海さんもその一人。今回、ヴァイオリン職人を目指す彼女に話を聞くことができました。

もともと日本の伝統工法である木組みなどの木工技術に興味があった七海さんは、日本の大学で建築学を学んだ後、ヴァイオリン職人になるためドイツに渡りました。ドイツでは職業訓練校を卒業し、国の認定を受けた人だけが専門職に就くことができます。七海さんはドイツアルプスの麓の美しい街Mittenwaldにある職業訓練校Staatliche Berufsfachschule für Musikinstrumentenbau Mittenwaldを受験することに決めましたが、受験するにはドイツ語レベルB2以上が必要。日本で大学在学中の頃からドイツ語を勉強してB2を取得しました。入学後は朝から晩まで実技と学科の授業の日々。入学当初11名いたクラスメイトも、仮入学期間を経て半年後には7名に。これだけでも職業訓練校がどれだけ厳しく大変かが伺えます。七海さんもこの7名の仲間と共に、無事進級することができました。

3年間を共に過ごしたクラスメイトたちと一緒に3年間を共に過ごしたクラスメイトたちと一緒に

最終学年の3年目には、それまでの集大成である卒業試験があります。まだ雪が残る4月から始まる卒業試験では各科目の筆記試験と同時に、6週間かけて1台の白木ヴァイオリンを作り上げる実技試験が行われます。実技試験では、製作工程で計画していた通りに行かないこともあり、常に時間との闘いだったそうです。それでもヴァイオリン製作に携わりたいという長年の夢を忘れず、何とか時間内に1本のヴァイオリンを作り終えることができました。

ヴァイオリン製作中の真剣な表情の七海さんヴァイオリン製作中の真剣な表情の七海さん

そして7月19日、期待と不安のなか、卒業試験の結果が知らされました。試験合格者は7名。七海さんを含むクラスメイト全員が無事合格を果たし、ヴァイオリン職人の国家資格(ゲゼレ)を取ることができました! 卒業式ではこれまで共に頑張ってきた仲間たちとお互いを称え合い、3年間過ごした学校での日々を懐かしんだといいます。

楽器で溢れる職業訓練校の校舎楽器で溢れる職業訓練校の校舎

こうして晴れて職人としての国家資格を得た七海さんは、今後の夢についてこう語ってくれました。「これからドイツのヴァイオリン工房で働いて、マイスターを目指したいです。そして将来は、日本で自分の工房を持ちたいと思っています」。これから七海さんのヴァイオリン職人としての仕事が始まります。七海さんが製作するヴァイオリンがお店に並ぶのが、今からとても楽しみです。

神田 浩一郎(かんだ こういちろう)
駐在員として赴任したミュンヘンで、自然や文化、人々に魅了され、2019年に完全移住。「ミュンヘン山の会」のメンバーとして月に1~2度ハイキングを企画したり、山歩きの魅力やミュンヘンでの日常生活を発信したりしている。
Instagram:@yama.trip.music_kou

 
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