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お気に入りがいっぱい! シヴィラ夫人の遊興宮殿

森に囲まれた小さな村で暮らしているわが家の楽しみの一つは、週末のサイクリングです。ラシュタットにあるシュロス・ファヴォリーテ、直訳すると「お気に入りの城」の周辺も、時々訪れるサイクリングススポットの一つ。手入れが行き届いた英国式庭園、小石を一つひとつ丁寧に敷き詰めた外壁、そしてバッロック様式のお城の組み合わせは、不思議な魅力を放っています。いつもは自転車に乗りながら横目で眺めるだけでしたが、この日は家族で見学ツアーに参加しました。

シヴィラ夫人のお気に入りが詰まったお城シヴィラ夫人のお気に入りが詰まったお城

最初に訪れた庭園ホールで目に飛び込んできたのは、向かい合う2体の女神像。慈愛を象徴するカリタスと正義を象徴するユスティティアの彫刻とのことです。八角形のホールの隅には四季を擬人化した4体の女神の彫刻、吹き抜け天井のフレスコ画、動物や風景が描かれた青と白のタイルが壁全体を覆っています。外観からは想像できないほど豪華なこのホールからも分かるように、この宮殿は全てが非日常に溢れていました。

後期バロック×和が調和した「日本の間」後期バロック×和が調和した「日本の間」

例えば「見せるためのキッチン」。当時、製造が難しかった銅製の鍋、世界各国から集めた陶磁器などを展示するためだけに造られたこのキッチンは、使用しないのに煙突の周辺を炭でわざわざ黒く塗るという細かい演出も。上階にある各部屋もこだわりに溢れています。フィレンツェの間、鏡の間、中国の間などそれぞれテーマがあり、なんと「日本の間」も! 光沢のある緑色の絹の壁紙と、京都で造られたという壁にかかる和服姿の女性や武将、亀や鳥などの紙製のレリーフは意外なほどバロック様式の室内と美しく調和していました。

宮殿は1710〜1729年にかけて、バーデン辺境伯のシヴィラ・アウグスタ夫人により建設されました。彼女の貴重な磁器やガラス製品のコレクションを収蔵したり、狩猟やコンサート、祝宴などを楽しんだりするための遊興宮殿として、細部に至るまで夫人自ら指示して造られたそう。夫人の優雅な生活に憧れますが、ガイドの方によると、当時、歯磨きの習慣がないため歯の状態は悪く、口を隠すための扇子が必須だったとか。さらに皮膚から侵入する菌を恐れて滅多に入浴はせず、横になるのは死ぬときだけとばかりに、寝室の豪華なベットでは寝なかったとのこと。そんな話を聞いて、貴族生活にはすぐに諦めがつきました。

小石を敷き詰めた外壁小石を敷き詰めた外壁

サイクリング中に寄り道した宮殿で、思いがけず日本を感じることができ、家族でうれしくなった秋のひととき。シヴィラ夫人の「お気に入り」は時を超え、今もなお輝き続けています。

ビルケルト( めぐみ )
南ドイツの黒い森の片隅で、自然と調和した暮らしを実践中。味噌や麹を通じた伝統食の紹介やオーガニックの魅力の発信、親子で楽しめる味噌作りワークショップを開催。ローカルな暮らしの日々をインスタグラムでつづっています。
@schwartzwaldtagebuch

 
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