Hanacell

この秋からのコロナ対策

夏からコロナ感染者数が再び増えていると知りました。ドイツではワクチン接種が行われているのに、感染者数が減らないのはなぜでしょうか。最近「3Gルール」という言葉を聞きましたが、どういう意味でしょうか。

Point

  • 夏以降に若年者のコロナ感染が増加
  • ワクチン未接種の人の感染が多い
  • 新規感染のほとんどがデルタ変異株
  • 12~17歳の子どもへのワクチン接種開始
  • 妊婦、授乳婦へのワクチン接種の推奨
  • 海外渡航用の日本のワクチンパスポート

現在の感染状況

● ドイツの感染者数

落ち着いたかに見えたコロナ感染が、7月中旬から急増しています。直近7日間の人口10万人当たりの新規感染者数を示す「7日間指数」(7-Tage-Inzidenz)は、ドイツ全体の平均が74.9(8月27日現在)と、すでに昨年10月20日頃の数値です。再生産数(R)は1.33と1を超え、感染拡大の状態です。

● 若い人、ワクチン未接種者が多い

夏以降の新規感染者は10~49歳の若い世代が主体で、ワクチン未接種者が大半を占めています(8月26日のロベルト・コッホ研究所[RKI]の週報、8月21日のARD Tageschau)。コロナによる入院患者も35~59歳が最も多く、次いで15~34歳と、ワクチン接種が済んだ高齢者以外の年齢層に移行しています(同週報)。

● ワクチン接種が進んでいるのになぜ?

昨年との違いは、①10~34歳の若い世代、特にワクチン未接種者の感染増加、②感染力の強いデルタ変異株が感染の99%を占め(8月26日のRKI週報)、さらに③感染防御に対する気の緩みが挙げられます。7月5日~8月1日の間にドイツ国外での休暇に出掛けた約5000人が感染しました(8月4日のHamburger Morgenpost)。

ウイルス変異株

● 変異株(Variante、Mutante)の名称変更

地名による人権侵害を防ぐため、ウイルス変異株の名称は発見地の地名(国名)ではなく、ギリシャ文字のアルファベット順に命名されることとなりました(WHO、2021年7月)。

● デルタ変異株(Delta-Variante)

デルタ変異株(インド型)は、従来型ウイルスに比べ感染力が約2倍、入院リスクが2.08倍、集中治療の必要リスクが3.34倍、死亡リスクが2.32倍と報告されています(7月21日のmedRxiv誌)。WHOが「VOC=懸念される変異株」に指定しました。

● ラムダ変異株(Lambda-Variante)

南米のペルーで猛威を奮い、南米諸国を中心に拡がっている変異株です。感染力がデルタ変異株と同等に強く、ワクチンによる中和抗体が効きにくいとされます(7月28日のBioRxiv誌)。ドイツでは感染者の0.1%(87名、8月20日のRKI週報)で確認されています。WHOは「VOI=注目すべき変異株」に指定しました。

ウイルス変異株の名称

名称 最初の発見地 特徴
従来型 武漢 最初の流行株
アルファ イギリス 感染力が強い
ベータ 南アフリカ 感染力が強い
ガンマ ブラジル 感染力が強い
デルタ インド 現在の流行株(感染の大半を占める)感染力が非常に強く、重症化しやすい
ラムダ ペルー 感染力が非常に強く、現在のワクチンが効きにくい可能性

ワクチン接種

● ワクチン接種の進捗状況

ドイツでは64.9%の人が1回以上のワクチン接種を受け、60.1%の人が接種を完了(Geimpfte)しています(8月28日時点)。未接種者(Ungeimpfte)の割合は60歳以上で14%、60歳未満では34%、12~17歳では70%と、現在の感染増加の年齢層と一致しています。

● 子どもへのワクチン接種開始

若年者層での感染と重症化の増加から、ドイツのSTIKO(予防接種委員会)は12~17歳の全ての子どもへのワクチン接種を推奨しました(8月12日の発表)。

● コロナ感染の快復者への接種

コロナ感染の快復者(Genesene)の追加ワクチン接種は、PCR陽性あるいは症状が消失して、早ければ4週間後から受けられるようになりました(8月18日のRKI発表)。無症状感染で充分な抗体ができなかったり、感染後早期に抗体が陰性化してしまうことがあるためです(本誌1129号)。

● 妊婦・授乳婦へのワクチン接種

妊婦へのワクチンの安全性が確認され(8月11日、米疾病対策センター[CDC])、未接種妊婦の感染重症化の報告もあることから、現在は妊婦、妊娠希望者、授乳婦へのワクチン接種が推奨されています。

● 3回目のワクチン接種

ワクチンの抗体価と効果は時間経過とともに低下していきます。イスラエルではすでに50歳以上を対象に、抗体価を維持するために3回目のワクチン接種が開始されました。ドイツでは9月より、2回接種して6カ月間を経た高齢者を対象に3回目の接種が始まります。

● 変異株へのワクチンの効果

デルタ変異株に対する効果は、ビオンテック/ファイザー社製が2回接種完了で88%、アストラゼネカ社は67%と報告されています(8月12日号のNEJM誌)。日本でもワクチン2回接種により、感染が未接種者の約17分の1 に減ることが報告されています(8月18日の厚労省の専門家会合)。

秋からの日常生活における制限

● 3Gルールって何?

8月半ばより「7日間指数」が35以上の州(地域)では「3Gルール」(3G-Regeln)が期間限定で適応されています。3Gとは、①ワクチン接種完了(Geimpfte)、②快復者(Genesene)、③48時間以内のコロナ検査の陰性証明(Getestete)の頭文字です。レストラン屋内での食事、美術館・博物館への訪問、ホテル宿泊などにいずれかが必要です。ハンブルクの一部では陰性証明以外の2Gルールの試験導入も始まっています。

3Gルール(7日間指数が35以上で)*

*クラブ、ディスコではPCR検査の陰性証明必要
いずれかが必要 以下の利用において(例)
・ワクチン接種証明
・快復証明
・陰性証明*(48時間以内)
・レストランの店内で食事
・ホテルの宿泊
・美術館・博物館
・屋内スポーツ、屋内イベント
・2500人以上の屋外イベント

● 無料の抗原検査は10月まで

「Bürgertest」と呼ばれる無料の迅速抗原検査(Antigentest)は、今年10月12日以降は有料になります。ワクチン接種が進んでいる現状と、検査施設への国の支払い負担を鑑みての決定です。

● ワクチン接種後でも注意

ワクチンは感染・発症を100%予防するものではなく、接種完了後もAHA-Regeln(AHA-Formel)と呼ばれる感染予防の継続が大切です。①1.5メートル以上の対人間隔(Abstand)、②手洗い(Hygine)、③マスク着用(Alltagsmasken)です。

ワクチン接種証明の利用

● ドイツ国内の接種証明

「黄色い手帳」、QRコードのプリントアウト、スマートフォン上のデジタルパス(本誌1149号)を利用できます。デジタルパスを利用しにくい地域や施設もあるため、旅行の際は黄色い手帳(または表紙と接種記録ページのカラーコピー)も持参すると便利かもしれません。

● ドイツから日本への帰国

ドイツでのワクチン接種完了者も、渡航時は引き続きドイツ出発前72時間以内のPCR検査による陰性証明(所定書式あり)が必要です。ドイツのワクチン接種証明はPCR検査の代わりには使えません。

● 日本からドイツへ渡航

日本からドイツへの入国の際は,原則としてワクチン接種証明書,快復証明書、陰性証明書のいずれか(ドイツ語、英語、またはフランス語)の提示が必要です(12歳未満を除く)。

● 日本のワクチンパスポート

日本でワクチン接種を済ませドイツを訪れる人は、7月下旬より日本の市町村にて接種証明書(ワクチンパスポート、英語/日本語)の交付を申請できるようになりました。ドイツ入国時とドイツ国内でのワクチン接種証明として利用できると期待されます。

生活上の留意点
・ コロナ感染と風邪、インフルエンザとの鑑別は容易でない。
・気分の落ち込む季節、コロナ禍でのメンタルケアが大切。
・秋、できるだけ日光に当たりビタミンDを保ちましょう。
・睡眠は体の免疫を高めます。昼寝、仮眠も有効。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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