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コロナ禍2度目の冬 新たな制限措置

ワクチン接種が進んだにもかかわらず、なぜコロナ感染者が増えているのでしょうか? ニュースで「2G」や「2Gプラス」という言葉を聞きましたが、具体的にはどうなるのでしょうか? また、「入院率」は何を意味しているのかを教えてください。

Point

  • 入院率が3以上で2Gルール
  • 入院率が6以上で2Gプラス 
  • 職場と公共交通機関で3Gルール
  • 5~11歳児もワクチン接種開始
  • ルール違反者の罰則強化の議論
  • メルク社の経口の抗コロナ薬

冬を前に昨年以上の感染増加

● 7日間指数が連日最大値を更新

昨年同時期を大きく上回る感染が見られます。ブランデンブルク州、バイエルン州、ザクセン州、ザクセン=アンハルト州、テューリンゲン州の7日間指数(7-Tage Inzidenz)は600を超えています(11月26日現在)。

● ワクチンがあるのになぜ?

ワクチン未接種者の感染、入院(集中治療室を含め)がほとんどです。感染力の強いデルタ変異株が猛威を振るう一方で、感染防止に対する気の緩みもあります(11月11日のWDRニュース)。ワクチン接種完了者も月日の経過とともにワクチン効果が弱まってきている可能性もあり、ブースター(追加)接種が必要になっています。

● ワクチン接種の有無で10倍以上の差

バイエルン州では、ワクチン接種完了者の7日間指数が「110」であるのに対し、未接種者は「1469」と10倍以上の差が見られます(11月17日のARD放送)。ドイツ全体で見ると、ワクチン接種率が低い州ほど感染が多い傾向があります。

入院率(Hospitalisierungsrate、Hosopitalisierungsinzidenz)

● 入院率の定義と意義

直近7日間の住民10万人当たりのコロナ感染による新規入院者数で示します(7日間入院指数[7-Tage Inzidenz Hospitalisierungen]と呼ばれることも)。州(地域)ごとの中・重症患者の状況と病床の逼ひっぱく迫状態を知る目安となります。

● 入院率の推定の迅速化

入院率の数値には、①その日に報告される入院患者数と、②後日の追加登録も含めて集計される実際の患者数の2種があり、①と②の値の差と2~3週間のギャップが問題視されていました。現在は、もともと経済予測で用いられる「ナウカスト」(now[今]とforecast[予想]の合成語)の手法にて、より正確な推定が可能になっています(ドイツ連邦統計局)。

ワクチン接種の有無と入院率(18〜59歳)

ワクチン接種の有無と入院率(18〜59歳)

2Gルール/2Gプラス(2G-Regel / 2G Plus-Regel)

● 「入院率」を基準にして

今冬のドイツ各州の制限措置は「入院率」により決められます(11月18日の決定)。以下の各々の制限措置は、いずれも5日間連続で入院率が基準値を下回った場合に解除されます。

● 従来ルールが適用されるのは2州だけ

従来ルールが適応されるのはハンブルク、ニーダーザクセン州の2州だけです(11月26日現在)。これらの州では新たな追加する制限措置はなく、これまでの規制が続けられます。

● 2Gルール

入院率が「3以上」で適用されます。レストラン、ホテル、イベント、施設訪問や利用は、ワクチン接種完了者(Genimpfte)とコロナ感染の快復者(Genesene)のみが可能となります。ワクチン未接種者は、抗原検査の有無にかかわらず利用できません。

● 2Gプラス

入院率が「6以上」で適用されます。感染リスクが高いと考えられる施設(クラブ、バーなど)の利用は、2Gであるワクチン接種完了者と快復者でも、コロナ抗原検査(Schnelltest)の陰性証明が必要です。バイエルン州、ザクセン=アンハルト州、テューリンゲン州をはじめとする6州が当てはまります(11月26日現在)。

● さらなる対応措置

入院率が「9以上」の州の政府は州議会の同意を得ることを条件に、さらなる措置を取ることができます(例えば、ロックダウンなど)。

● 制限措置の対象外となる人

正当な理由でワクチンを接種できない人、医学的にワクチン接種が推奨されない人、あるいは18歳未満の未成年者は制限措置の対象から除外されています。

職場での3Gルール(3G-Regel)

● 未接種者はコロナ検査(Corona Schnelltest)が必要

勤務先での感染を防ぐ目的で、職場でも3Gルールが導入されます。ワクチン未接種者は勤務前に毎日検査の陰性結果(抗原検査では24時間以内)が必要です。職場では引き続き週2回の無料検査を受けられます。

● ホームオフィスの義務化

業務上の支障がない限り、雇用主はホームオフィス(テレワーク)を許可することが義務化されました。

公共交通機関も3Gルール

● 未接種者は陰性証明が必要

市内のバス、Uバーン、Sバーン、都市間の中・長距離電車の利用に3Gルールが適用されます。ワクチン未接種者が公共交通機関を利用する際は、コロナ検査の陰性証明が必要です。

ワクチン接種の促進

● ワクチン未接種者を減らす

ドイツ全体で約67%の人がワクチン接種を完了しました。しかし、60歳以上の約14%が未接種であり、特に高齢者の感染は生命に直接関わる(9月16日のBMJ誌)ため、早く接種を完了させることが大切です。

● 3回目接種、ブースター(追加)接種

接種から半年以上たつと、ワクチン効果が次第に減弱してきます(10月のmedRxiv誌)。この秋より、ワクチン接種完了から6カ月(ワクチン供給数にゆとりがある場合は5カ月)が経過すれば、追加接種を受けられるようになりました(RKI)。

● 5~11歳児童へのワクチン接種

今年12月後半より、12~17歳の青少年に加え、5~11歳へのワクチン接種が開始されます。

罰則の強化

● ノルトライン=ヴェストファーレン州では

マスク着用義務のある場所で非着用の場合は、150ユーロ(今まで50ユーロ)の罰金が科されます。そのほかコロナ検査結果の偽造は2000〜5000ユーロ、またレストランや施設利用に際してワクチン証明やコロナ検査結果の確認を怠った場合は2000ユーロ(今まで500ユーロ)に引き上げられる予定です。

コロナ治療の内服薬

● モルヌピラビル(Molnupiravior)

欧州医薬品庁(EMA)は、欧州連合(EU)内での抗ウイルス薬のモルヌピラビル(Lgevrio®、米メルク社)の緊急使用を認める勧告を発表しました(11月19日)。酸素療法を必要としない軽症・中等症のコロナ感染症患者が対象の経口薬で、ウイルスの自己増殖の際に複製エラーを生じさせて増殖を抑える薬です。

この冬の旅行

● 滞在地の感染情報、制限措置に注意

制限措置は突然に更新されることがあるため、旅行直前まで感染情報に注意してください。宿の予約はぎりぎりまでキャンセルが可能なものが望ましいでしょう。

● 日本への一時帰国を予定している方

入国時にドイツ出国前の陰性証明が必要です。クリスマス近くは休みの医療機関や検査ラボがあるため、留意しましょう。証明は日本のフォーマット(あるいは準じたもの)で用意することが大切です。ドイツからの日本人帰国者はワクチン接種の有無にかかわらず、検疫所の宿泊施設で6日間の待機が必要です。待機期間の短縮措置は停止されています(12月1日の日本外務省)。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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