Hanacell

膝・股関節の痛み

以前から立ち上がるときに膝がポキッと音が鳴ります。最近はジョギング中に時々痛みを感じることがあるため、膝の病気ではないかと心配です。

Point

  • 膝の構造は複雑
  • 単発音「ポキッ」の多くは心配なし
  • 痛み、腫れを伴うときは整形外科へ
  • スポーツで多い靭帯損傷
  • 成長期では練習過多による障害も
  • 過体重は膝への負担も大

膝の構造

● 複雑な関節

膝の関節(Gel enk)は、①太ももの骨(大腿骨(だいたいこつ))、②すねの骨(脛骨(けいこつ))、③膝の「お皿」(膝蓋骨(しつがいこつ))の三つの骨(Bein、Knochen)、④半月板と呼ばれる二つの軟骨(なんこつ)、⑤前十字靭帯、⑥後十字靭帯、⑦内側側副靱帯、⑧外側側副靱帯の四つの靱帯(Band)で構成されています。

膝の構造

膝の音

● コキッ、ポキッと鳴る(knacken im Knee)

高い単発音は、座ったり立ったりして関節を急に動かしたときに、関節液の圧力が変化してできる気泡が弾ける音と考えられています。指がポキポキと鳴るのに似ています。

● ギシギシ、ゴリゴリと鳴る (knirschen im Knee)

低い連続音は、関節のクッションである軟骨がすり減り、軟骨同士が摩擦を起こしている可能性が疑われます。膝に痛みを伴う場合は「変形性膝関節症」も考えられます。

変形性膝関節症(Kniegelenksarthrose)

● 膝の痛み、水がたまる

中高年、特に女性(男女比 1:4)に多く見られ、「膝の痛み」や「関節に水がたまる」が主な症状です。痛みは関節の軟骨がすり減るためで、進行すると関節を包んでいる関節包(かんせつほう)の炎症を生じ、浸出液で膝が腫れ「水がたまった」状態になります。

● 原因

加齢、肥満、筋肉の衰え、遺伝的素因などが関係します。膝付近の骨折、半月板損傷も危険因子となります。

● 関節の変化

膝の関節軟骨がすり減るため関節の骨と骨のすき間が狭くなり、骨の関節面にとげのような変化が現れたり、骨の変形にてO脚変形が見られたりします。

● 予防法

肥満があれば減量し、大腿四頭(だいたいしとう)筋(太ももの前に位置する筋肉)を鍛え、正座を避けます(日本整形外科学会)。ウォーキングは30分以内にしましょう。また、スクワットは膝への負担が大き過ぎることもあります(日本臨床整形外科学会)。

● 人工膝関節とは?

膝の関節全体の変形が著しく、痛みのため日常生活への影響が強い場合には人工膝関節の手術も検討します。人工膝関節は人体への適合性がある材料からつくられており、膝がなめられかに動くようにできています。

半月板損傷(Meniskusriss)

● 膝のクッションの役割

半月板は膝の関節の大腿骨と脛骨の間にある軟骨です。内側と外側にあり、膝にかかる重さを分散したり、衝撃を吸収したりする働きを担っています。

● 半月板損傷とは?

スポーツで膝を大きくひねったり、40歳以上の人では加齢で弱った半月板にちょっとした力が加わったりすると断裂することがあります。損傷すると膝の曲げ伸ばしする際に引っかかりや痛みを感じます。

● 診断と治療法

診断にはMRI(ドイツではMRT)検査が有用です。半月板の中心部への血行がないため、中心部断裂の自然治癒は期待できず、日常生活への影響を伴う場合には関節鏡による切除も考えます。

靭帯(じんたい)の損傷(Bänderverletzung)

● 靭帯損傷の種類

加わる外力の方向に応じて損傷する靭帯が異なります。頻度が高いのは外反強制(すねを無理に外側に向ける)による内側側副靱帯損傷です。スポーツなどでジャンプの着地時にねじれが加わったりすると前十字靭帯(Kreutzband)を、サッカーで前すねを蹴られて無理な後方への力が加わると後十字靭帯を損傷します。

● 治療法

けがの直後は安静を保ち、サポーターを装着して動いたときの膝の動揺を抑えます。前十字靭帯は血流が乏しいため、自然治癒の可能性は低く、スポーツ競技への復帰を目指す場合には手術が勧められます。

オスグッド・シュラッター病(Morbus Osgood-Schlatter)

● スポーツをする10~15歳に多い

スポーツをする10〜15歳の成長期の子どもに起こりやすく、膝の関節のすぐ下のすねの骨(脛骨)の上の部分が突出し、運動時に痛みます。

● 原因

大腿四頭筋からの腱が付着している脛骨表面の軟骨の一部が、大腿の運動と共に引っ張られ剥がれるためです。スポーツの慢性障害

● 使い過ぎ症候群(Übertraining)の一つ

長時間のランニング、ダッシュ、ジャンプ、着地など急な動作を繰り返し行い、膝に負担が掛かり生じます。スポーツが盛んな10代に多くみられます。

● 障害の種類

ジャンプや着地を繰り返すスポーツに多い「ジャンパー膝」(大腿四頭筋腱付着部炎と膝蓋腱炎)、ランナーに多い「ランナー膝」(腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん))、膝から5センチほど下のすねの内側が痛む「鵞足炎(がそくえん)」が知られています。

● 原因

青少年における骨と筋肉の成長のアンバランス、筋力不足に加え、それらを無視したオーバートレーニング、選手に合わない練習、またシューズが足に合っていない場合も発症の原因になります。

大腿骨頚部骨折(Schenkelhalsfraktur)

● 高齢者に多い

加齢に伴い骨が脆くなった状態(骨粗しょう症)での転倒や、ベッドからの転落で起こります。日光浴不足からのビタミンD欠乏も骨を脆くします(本誌1137号参照)。

● 原因

大腿骨は骨盤の関節の手前でくの字に曲がって体を支えています。転倒、転落の際には、その曲がった首の部分に大きな力が掛かかるためです。

変形性股関節症(Hüftarthrose、Coxarthrose)

● 生まれつき原因ありが80%

日本人の場合、生まれつき股関節に構造的な課題(発育性股関節形成不全)があるケースが原因の約80%です。

● 痛みと機能障害

立ち上がるときに足の付根の辺りに痛みを感じます。進行して関節の隙間が狭くなったり骨棘(こつきょく)ができるようになると痛みは常時続き、靴下を履けなくなったり、長時間の立ち作業が難しくなったりします。日常生活での動きを減らすことが基本です。過体重は関節への負荷が大きいため、体重のコントロールが大切です。場合によっては手術による人工股関節も検討されます。

鼠径(そけい)部痛症候群(グロインペイン症候群)

● サッカー選手に多い

サッカー選手に多く、キック動作など腹部に力が入ったときに鼠経部と周辺(下腹部、太ももの内側、睾丸の後ろ側)に痛みを感じます。

● 早期治療が大切

痛みを我慢したまま慢性化すると復帰が遅れるため、キック動作での痛みが続くときは、スポーツ領域を専門とする整形外科(Orthopedie)を受診しましょう。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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