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初めてのドイツ生活と健康 - 医療編

今年初めにドイツに来ました。日本で処方してもらった血圧の薬がそろそろ切れるので、初めてこちらの医療機関を訪れたいと考えています。ドイツでの受診はよく分からないことばかりなので、医療制度の仕組みも含めて、詳しく教えてください。

Point

  • 疾病保険カード(保険証)が大切
  • 基本的に受診の前に予約を
  • 外来診療は開業医(病院は入院施設)
  • 公的保険では家庭医制度が基本
  • 処方薬は薬局(Apotheke)で
  • 救急車は電話「112」へ

受診の際に必要なもの

疾病保険カード (Gesundheitskarte)

日本の健康保健証に当たる電子カードです(elektroniche Gesundheitskarte、Krankenversicherungskarte)。診察の際に受付で提示します。カードには被保険者の氏名、生年月日、性別、住所などの情報がICチップに記録されています。

受診前の予約

外来を受診する前に電話で予約を入れます(ウェブサイト上に予約サイトを設けている場合も)。医療施設によっては、その日に具合が悪くなった人のために予約なしの患者への対応をしているところもあります(Akutsprechstunde)。

同意書への署名

「電子カルテ」(elektronische Gesundheitsakte、eGA)への記入の際に、受診者の氏名・住所を含む個人データの電子保存への同意が求められます。プライベート保険患者(後述)では、さらに診療費の支払いへの同意と、外部の請求代理会社への委託の同意が必要です。

法的疾病保険

9割が加入する公的保険

ドイツで健康保険というと、通常は「法的疾病保険」(gesetzliche Krankenversicherung、GKV)を意味します。公的疾病保険(以下、公的保険)とも呼ばれます。DAKやAOKなど96の疾病金庫(Krankenkasse)が運営しています(2023年1月時点)。

保険料は?

加入者本人と勤務先で折半します。扶養家族は無料で加入でき、診察代は全て保険により賄われます。月々の保険料は収入に応じて高くなります。

検査・処方薬での制限あり

利用できる検査項目や処方薬は、疾病金庫組合との合意に基づいて一定の枠が設けられています。

家庭医の制度

かかりつけ医である家庭医(ハウスアルツト、Hausarzt/-tin)の制度が公的保険の中心となっています。日常の診療だけでなく他科専門医への紹介や入院の際には、スムーズに治療を受けられるようにサポートしてくれます。眼科、婦人科、小児科など一部の診療科を除き、家庭医を通さずに他診療科の予約を取ることは困難なこともあります。

プライベート疾病保険

民間保険会社による疾病保険

安定した一定以上の収入がある場合には法的(公的)保険の加入義務が解除され、民間疾病保険会社の保険(プライベート保険、PKV)に加入することができます。検査や処方薬の制限が公的保険より少なく、家庭医を通さずにほかの診療科を受診できます。

家族の保険料は?

プライベート保険では、公的保険に加入していない扶養家族分の支払いが必要です。診察代は後で送られてくる医療機関(あるいは外部の請求代理会社を介して)の請求書に基づいていったん自分で支払い、後日規定に従った還金がなされます。

大切な事前告知

プライベート保険の加入前からの病気のため薬剤を継続したい場合や臨床的に経過観察が必要な基礎疾患がある場合は、加入時の申告が大切です。申告を怠ると後で不都合を生じることも。

ドイツの医療施設

❶ 開業医(Praxis)

外来診療を担当

ドイツの外来診療(Ambulanz)は基本的に開業医が担っています。レントゲン検査も放射線科専門医の開業施設で行われます。日本のように開業医と病院で同じような外来診療を行っているわけではありません。

診療科の役割分担

公的保険患者が循環器内科、内分泌内科、泌尿器科などの専門医を受診する際は原則、家庭医を通じて専門医に紹介されます。そこで専門的な検査や治療指示を受けた後、家庭医にて治療を継続します。

❷ 病院(Krankenhaus)

入院治療を担う

病院は主に入院患者のみを扱う医療施設です。通常、退院後は紹介元の開業医の元で治療が継続されます。

日本よりも入院期間が短い

急性疾患の平均入院日数でみると、日本は16.4日であるのに対し、ドイツでは7.4日と報告されています(2021年のOECD報告書)。

入院時に必要なもの

身分証明書、疾病保険カード、家庭医あるいは専門医からの入院指示書、緊急時の連絡先、さらにプライベート保険では入院費用支払いの同意書への署名。

❸ 大学病院(Uni-Klinik)

より専門性の高い疾患

大学病院の外来はより専門性の高い疾患を抱える人や、より高度な治療が必要なとき、また臨床研究のための専門医療機関として機能しています。受診には原則、専門医からの紹介を必要とします。

夜間・休日の救急医療(Notfall)

急患外来(Notfallambulanz)

夜間や休日の急患は、病院や大学病院の救急外来、市の救急診療所などで診てもらえます。入院治療の必要がない場合は、応急の治療を受けて自宅に戻ります。

持参するもの

健康保険カードと身分証明書(あるいはパスポート)を持参してください。日常服用している薬剤や基礎疾患があれば受診時に伝えるようにしましょう。普段から病名と薬剤名を書いた「緊急連絡カード」(Notfallausweise)を用意しておくと良いでしょう(詳しくはこちら)。

救急車は112

電話番号「112」で救急車を呼びます(公式アプリ「nora」も使えます)。ドイツで3種類ある救急車のうち日本の救急車に近いのはレットゥングスヴァーゲン(Rettungswagen)です。さらに医師も同乗するノートアルツトヴァーゲン(Notarztwagen)、患者搬送だけを目的とするクランケンヴァーゲン(Krankenwagen)があります。電話の際には、自分の住所(居所)、電話番号、症状(例えば、腹痛はBauchschmerz)などを記したメモがあると、慌てずに伝えることができます。また救急車を呼ぶべきか迷うような場合は、電話番号「116117」にかけて助言を仰ぐことができます。

薬局(Apotheke)

処方箋による薬(Rezeptpflichtige Medikamente)

医師が書いた処方箋(Rezept)の薬を受取ります。処方箋に製剤名指定がない限り、薬局の判断で同じ有効成分・同容量で、より安価な製剤が調剤されます(ドイツの代替調剤ルール)。

直接に薬局で購入できる薬

医師の処方箋なしでも購入できる「処方箋不要の薬」(Rezeptfreie Medikamente、薬局販売医薬品)、例えば作用の強くない風邪薬、解熱鎮痛薬、胃腸薬などは薬局から直接購入できます。

日本からの治療の継続

英語で紹介状を準備

ドイツ国内で日本語での診療を受けられる医療施設は限られています。日本から継続して治療を受ける場合には、英語で疾患名、服用中の薬剤(日本の製剤名ではなく、成分名)とその用量、最近の検査データを日本の医療機関で用意してもらうのが良いでしょう。

日本の薬を継続する場合

日本で服用している同じ薬が必ずしもドイツでも入手(処方)できるとは限りません。手持ちの薬が切れる直前でなく、時間的な余裕をもって医療機関に相談するようにしましょう。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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