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低血圧と立ちくらみ

1数カ月に1度ぐらいの頻度で、歩いているときにクラっとするのは低血圧と関係がありますか?食べ物で気をつけることはありますか?

低血圧とは

一般的に、収縮期血圧(最大血圧)が100mmHg以下を「低血圧」と呼んでいます。厳密な基準はなく、収縮期血圧が110mmHg未満でも「血圧が低め」と言われることがあります。出血などで急激に血圧が下がり、生命の危険を伴う重篤な状態となる「ショック状態」とは異なります。

本態性低血圧と起立性低血圧

原因が不明で、主に若い女性に多くみられるのが「本態性低血圧」です。年齢とともに血圧が上昇し、「正常化」することが少なくありません。血管に対する圧負担が小さく、動脈硬化を生じにくいため、心筋梗塞、脳血管障害などの危険が少ないと考えられています。一方、立ち上がったときに収縮期血圧が20mmHg以上下がる場合を「起立性低血圧」といいます。降圧剤やパーキンソン病などの神経疾患などが誘因になっていることもあります。特に高齢者では、血管の血流調節機能の低下により、立ちくらみしやすくなります。

食後には血圧が下がる?

食後は血流の分布が消化を助けるため、胃に移動するとも言われ、食後に血圧の低下や眠気が感じられることがあります。

低血圧は女性に多い?

本態性低血圧は20~30歳代の女性に最も多くみられます。低血圧には明らかな性差があり、各年代とも男性より女性の方に多くみられます。血圧は年齢とともに高くなる傾向があるため、低血圧の頻度は年齢とともに減少します。

どんな症状が出るの?

ほとんどは無症状ですが、朝起きにくい、めまい、立ちくらみなどに加え、疲労感、肩こり、脱力感、四肢の冷感を訴える人もいます。また入浴時には、全身の皮膚血管が拡張してさらに血圧が下がるため、気分が悪くなる人が少なくありません。(表1)

表1 低血圧の症状
● 立ちくらみ  ● めまい ● 動悸  ● 疲労感 ● はきけ

低血圧の人は朝に弱い?

血圧の低い人は覚醒直後の朝に弱いといわれます。私たちの血圧は夜間は日中の血圧より低いのですが、目覚めるころには、ほぼ日中の血圧値に近くなっています。低血圧の人は夜間にさらに血圧が低く、起床時も血圧が低いために、朝に弱いといわれるのかもしれません。

低血圧と貧血は別のもの

めまいの原因として両者はよく混同して用いられますが、全く別の病態です。前者は脳への血流の問題で、後者は鉄欠乏性貧血などによる酸素運搬低下が原因です。しかし若い女性の中には、血圧が低めで軽度の貧血もあるという人も少なからずいるので、立ちくらみが続くような場合は、一度医師の診察を受けてみるとよいでしょう。

朝礼での「脳貧血」

日本の学校で行われる朝礼などに見られるように、過度に緊張した状態で長時間にわたり直立不動でいると、突然、眼前が真っ暗になり倒れることがあります。通称「脳貧血」と呼ばれていますが、実際の貧血ではありません。専門的には起立性調節障害(OD)と呼ばれるもので、10歳以上の思春期前後の子どもの5~10%程度にみられます。

食事で気をつけることは?

水分を多く取ることが大切です。食事は1回の大食ではなく、少量を何度かに分けて食べるようにしましょう。炭水化物だけの食事ではなく、栄養のバランスの取れた食事が大切です。食塩制限の必要はありませんが、多く摂れば血圧が上がるというわけでもありません。

アルコールやカフェインによる影響は?

アルコールは、血管拡張作用と利尿効果で血圧低下を助長することがあります。コーヒー、紅茶、コーラの中のカフェインは血管拡張を抑えるので血圧を下がりにくくしますが、カフェインの取り過ぎは不眠や動悸の原因ともなります。

毎日の生活で注意することは?

朝の起床時や日中立ち上がる時などは、ゆっくり行動するようにしましょう。また外出先で具合が悪くなった場合は、足を交差に組んで両足を絞り込むようにして椅子に座り、心臓に戻る血液量が増えるようにします。同じようなしくみで、著しい起立性低血圧の人に用いられる弾性ストッキングは下肢に溜まる血液を少なくします。(表2)

表2 本能性低血圧の日常生活での留意点
● 水分を多めに
● アルコールを控える
● 塩分は制限しない
● 栄養バランスがとれた食事 (炭水化物だけの食事は避ける)
● 1回での大食をさける
● ゆっくり立ち上がる
● ゆっくり行動する
● 熱い風呂の長湯はさける

軽度の運動を継続的に

適度なスポーツは血管運動の調整機能を刺激します。激しい運動を不規則にやるよりは、軽度の運動を定期的、継続的に行う方が効果的だと考えられています。気分が悪くならない程度の「でんぐり返し」や「逆立ち」も血管運動の調整機能を刺激します。

低血圧の薬

低血圧による症状が著しく、日常生活の妨げになるような場合には、薬物が処方されることがあります。循環血液量を増やすステロイド系の薬や、心臓の運動を刺激する薬があります。副作用も皆無ではないため、医師の指示に従った服用が必要です。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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