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再び、新型インフルエンザの予防について

日本では再び新型インフルエンザの患者が増えていますが、予防にはどのような注意が必要ですか?

新型インフルエンザ(A型H1N1)については767号(5月29日)でも説明しましたが、さらなる流行拡大の兆しが見えているので、再度予防について考えてみましょう。

新型インフルエンザの特徴

新型インフルエンザは、「新型」とはいうものの、1957年頃まで流行していた季節性インフルエンザとよく似ています。そのため、当時すでに感染した経験を持つ比較的年配の人は発病しにくく、12~17歳の年代が多く感染しています(図1)。新型インフルエンザの感染力は通常の季節性インフルエンザとほぼ同様とされていますが、若い人に感染しやすいようです。一方、重症例は40歳以上の人たちにみられています。鳥インフルエンザのような強毒性のものではありませんが、乳幼児・妊婦・糖尿病患者・透析患者の場合は重症化しやすいので注意が必要です。

感染の経路

新型インフルエンザの感染ルートは、①ウィルスを含む飛沫物を吸い込んでの飛沫感染、②空気中に漂うウィルスを含む微小粒子を吸い込んでの空気感染、③ドアノブなど感染者が触れた場所からの接触感染です。ドアノブなどに付着したウィルスは、付着後2~8時間は感染力を持ち続けます。

予防手段

●手洗い・うがい
手洗いは接触感染を防ぐ効果的な予防法です。手を指先まで十分な水で洗い流すことが基本です。外出から戻ったら真っ先に行いましょう。うがいは特に薬用のうがい薬を用いなくても、水で十分な効果があります。よく「うがい、手洗い」と言われますが、「手洗い、うがい」の順番の方が良いでしょう。
●人混みを避ける
生活圏内で新型インフルエンザの流行が確認されたら、狭い空間に不特定多数の人が集まるような場所への外出は可能な限り控えるようにしましょう。
●十分な休養と睡眠
新型インフルエンザは感染症です。感染症は、免疫力が低下している時により感染しやすくなります。睡眠不足、過労には特に注意しましょう。

マスク着用に対する考え方と効果

日本ではマスクの着用が感染予防の手段として一般的ですが、米国の感染症の疾病対策センター(CDC)はこれを推奨しておらず、当地ドイツでも外出時にマスクを着用している人はほとんどいません。マスク着用は、適切なマスクを正しく着用している場合にのみ効果があります。例えば、手や顔、髪の毛などに微小粒子が付着している可能性があるため、手も顔も髪の毛も十分に洗った上で、やっとマスク本来の効果を享受できます。

気道からの飛沫物質(5ミクロン以上)は不織布製マスク、空気中の飛沫核物質(0.3ミクロン以上)はN95マスク、ウィルス自体(0.03ミクロン以上)はナノフィルター・マスクを用いないとウィルスの進入を防ぐことはできません。

タミフル服用について

大人の場合、インフルエンザに感染した患者と接触した後、2日以内にタミフルを服用すると、連続して服用している期間は予防効果が持続します。その有用性は約80%。免疫力が低下している患者、重症化の危険性のある基礎疾患などを持つ人や妊娠している人が濃厚接触者となった場合には、予防投与が勧められています。一方、小児への投与に関しては議論が残っています。

インフルエンザが疑われたら

症状などによりインフルエンザ感染が疑われたら、掛かり付けの医院に連絡した上で診察もしくは往診の予約を取りましょう。人に迷惑を掛けたくないという気持ちから無理をして職場に出勤したり、幼稚園や学校へ出迎えに行ったりする人もいますが、結果的により多くの人を感染の危機にさらすことになりかねません。

新型インフルエンザの診断

患者の鼻咽頭からの分泌物の培養にてウィルスを同定するか、PCR試験という遺伝子診断法を用いてウィルスの遺伝子配列を確定することにより診断されます。また、新型インフルエンザ(A型H1N1)の場合、インフルエンザの症状が出ているにも関わらず、季節性インフルエンザの簡易診断テストでは「陰性」と出ます。従って、その場合には逆に新型インフルエンザが疑われます。

予防ワクチン

今、世界中で急ピッチの生産が行われています。ドイツは9月からのワクチン入手を目指しましたたが、予定より遅れて10月末から11月になりそうです。妊婦やハイリスクな基礎疾患を有する人から優先的に投与される予定で、季節性インフルエンザの経験からするとおよそ80~90%の発症予防(65歳未満の成人の場合)が期待されています。成人の場合1回だけのワクチン接種で十分な免疫を得られるとの報告があります(9月10日の米国の医学雑誌発表論文より)。なお、新型インフルエンザA(H1N1)に効くワクチンは、通常の季節性インフルエンザに対しては予防効果がありません。そのため、人によってはワン・シーズンに2度インフルエンザに罹る可能性があります。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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