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体の臭いが気になる

最近、自分の体臭を気にする若い人が増えていると聞きます。体臭とは何かを教えて下さい。

体臭(Körpergeruch)とは

文字通り、体から出る汗や皮脂などが元となって発散される臭い(香り)です(表1)。パトリック・ズュースキントの小説「Das Parfum(香水―ある人殺しの物語)」には無体臭の主人公が登場しますが、全く体臭がない人は存在しません。体臭は指紋のように個人を識別する要素として、警察犬が所有物から犯人を追跡する際などにも利用されます。

表1 体臭に関係する要因
身体の清潔さ病気で入浴できない / シャワー、入浴の回数が少ない / 頭を洗わない
食事内容アルコール / ニンニク、ネギ、タマネギの豊富な食事 / ある種の薬剤
衣服同じ下着、Tシャツを洗わず繰り返し着用
口臭・呼気歯周病 / 胃の病気 / 食事(上記と同じ)
病気重い肝臓の病気 / ケトーシスを伴う重い糖尿病
わきが形質 / 身体の清潔(上記と同じ)

汗と体臭

本来、汗はほとんど臭いませんが、汗と混じった体表の細菌(常在菌)の増殖と皮脂の酸化で独特の臭いが発生します。汗を出す汗腺には、ほぼ全身にあるエポクリン腺と、脇の下や外陰部にあるアポクリン腺の2種類があります。アポクリン腺から分泌される汗にはタンパク質や脂肪が混ざっており、これが常在菌により分解されて異臭(わきが)を生じます。ほ乳類の場合、アポクリン腺から出る汗は一種のフェロモンとして機能しています。モンゴロイド系の人種では、「わきが」体質の人の割合が少なく、敬遠される傾向にあるのに対し、欧米では「わきが」体質の割合が高く「わきが」を気にする人は日本ほど多くないようです。

食事と体臭

日常的にニンニクやタマネギ、香辛料を摂取する習慣のある人は、その食材に由来する特有の臭いが発せられます。ドイツ名物のアスパラガスを食べた後、尿に独特な香りがするのもこの一例。脂肪類を多く摂り、血液中の脂肪値が高くなると皮膚からの皮脂分泌も増えるため、肉食が体臭に影響するという説もあります。また、服薬中のビタミンB剤や抗うつ薬の一部も独特の臭いを伴うことがあります。

衣服と体臭

衣服や下着には、汗をかいていなくても臭いが移っていることが少なくありません。実際、ノネナール(加齢臭の原因と考えられている物質、後述)は3日間着用したシャツから見つかっています。洗わないまま何度も着用していると、知らないうちに周りの人に臭いとして感知されることになります。

口臭(Mundgeruch)の原因

口や呼気から放たれる臭いが口臭です。原因は様々で、アルコール、ニンニク、ネギなどを食べた後の一時的な食事由来のもの、喫煙の習慣に伴う独特のヤニ臭に加え、歯周病に伴う細菌の増殖、扁桃腺に細菌の死骸などが貯まってできる膿栓(のうせん)、蓄膿症(副鼻腔炎)。また、胃潰瘍など胃疾患などによる病的口臭があります。口臭の除去には各々の原因に見合った対処が必要です。

病気と体臭

非常に進んだ肝臓病 (肝不全)、ケトーシスと呼ばれる重度の高血糖を伴う糖尿病患者、また魚臭症候群という代謝疾患ではそれぞれ独特の臭いが観察されます。虫垂炎などの手術後も、排便が開始するまで便臭に近い体臭に気付くことがあります。

加齢臭について

40歳以降の男女にみられる特有の体臭は、資生堂の命名で「加齢臭」と呼ばれています。皮膚にある皮脂腺から出た不飽和脂肪酸が酸化分解されてできるノネナールという物質が原因です。30歳代から顕れるペラルゴン酸という臭い物質も発見されています。年齢が高くなるにつれ、脂肪酸の酸化に対する抑えが弱くなることも関与しているようです。

他人の体臭が気になる時に

他人の体臭に対する感じ方は人によって大きく異なります。好きなパートナーの体臭は心地良く、嫌いな人のそれは「……憎けりゃ、袈裟どころか臭いまで嫌だ」ということにもなりかねません。暮らしている環境や不満などの心理状況が、周囲の体臭をより気にさせる誘因になることもあるかもしれません。

体臭恐怖症って?

ほとんどの人は自分の体臭・口臭には無頓着です。一方、自分の体臭で他人に迷惑を掛けたくないという気持ちが強すぎて、日に何度もシャワーを浴びたり、種々の薬剤を用いたり、体臭のせいで周りの人が自分を避けていると思い込んでしまう人もいます。こういった「体臭恐怖症」は、几帳面で、自分の体臭や口臭について指摘されたことのある人に多いようです。一種の神経症に近い状態となり、社会生活に支障を来すような場合には、1人で悩まず専門医のアドバイスを受けましょう。

表2 体臭対策
● シャワーで汗を流し、石けんで汚れをとる
● 髪と頭皮をきれいに
● 毎日下着を取り替える
● 食事内容に注意する
● 口臭の原因を予防する

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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