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生活習慣病

最近よく聞く「生活習慣病」とは、いったいどのような病気でしょうか。

その原因は?また具体的にはどんな 病気のことを指すのでしょうか。

これは毎日の良くない生活習慣の積み重ねにより引き起こされる病気の総称で「ライフスタイル疾患」とも言われています。具体的には「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」です。これらの多くは症状がほとんどなく、知らず知らずのうちに血管障害を助長し、ある日突然「心筋梗塞」や「脳卒中」を引き起こすため、「サイレント・キラー」とも呼ばれています。共通の特徴は、発症に食事、運動、ストレスが大きく関わっていることです。言い換えると、生活習慣の是正により、ある程度予防することができる 疾病群とも言えます。

これらの病気は遺伝するものですか?

「現代の国民病」とまで言われる生活習慣病ですが、発症は遺伝的素因に環境因子が加わることに因ります。しかし、実際に強い遺伝性の糖尿病や高脂血症、高血圧を有する人は一部に過ぎません。一方、興味深いことに、日本国内の糖尿病受診率は車の保有台数ときれいな相関が見られます(図1)。日本人のライフスタイルの向上、すなわち環境の変化 が生活習慣病には大きく関係していると言えるでしょう。

図1

欧州に暮らす私たちにとっては、当地での食事の影響が気になります。

私たち日本人が従来食べてきた和食とは、炭水化物(糖質)が多く(60〜65%)、タンパク質(15〜20%)と脂質(15〜20%)が少なめというものでした。しかし戦後50 年間で、脂質(油)の摂取量が年間7%から 26%に増えているのです。これには欧米型の食事の普及が大きく影響しています。

若い人たちは脂質をかなりうまく処理できますが、ある程度年齢のいった方々が同じように高脂質の食事を毎日続けると、処理能力を超えてきてしまう場合もでてくるのは当然です。

一方、糖尿病では摂取総カロリー、高コレステロール血症では動物性脂肪、高血圧では食塩の過剰摂取がそれぞれ発症の誘因となりますが、ここで問題なのは、同じ量のカロリーもしくは脂質などを摂取しても、欧米の白人に比べて日本人を含むアジア系の人たちは、許容量が低いことです。そのため持続的に摂取すると、コレステロールが大血管内側にプラークとして付着するなどの現象が起こります。

医学的に望ましい食事とは「何を食べたらよいか」ではなく、「栄養のバランス」と「適量」です。私たちの欧州での食生活をもう1度チョックしてみましょう。

予防には、運動をすることが大切だと聞きました。

運動不足は生活習慣病の大きな要因です。一般に、運動の必要性を認識している方は多いといわれており、運動トレーニング器具の購入者数は実際のトレーニング人口よりはるかに多いと聞きます。しかし、私たちは車やエレベーターがあればそちらを使いますね。

運動というと、多くの方は 30分ジョギングして何カロリー消費、などとエ ネルギー消費の効能を考えがちですが、大切なのは筋肉量と筋力の保持です

私たちは年齢とともに同じ体重でも次第に筋肉が減少し、脂肪に置き換えられていきます。筋肉が多いほど細胞内の糖質の取り込み量も良く、血糖制御に役立ちます。

どのような運動が良いかは専門家により多少意見が異なりますが、最も大切なことはできるだけ足を使って歩くことです。なぜなら、両足は体の中で最も筋量の多い部位だからです。

太っている人は生活習慣病にかかりやすいのでしょうか。

昔から肥満と糖尿病の関係は良く知られており、太った人には高脂血症、高血圧が多いこともわかっています。

一方最近では、肥満の中でも特に「上半身肥満」「内臓肥満」「リンゴ型肥満」と言われるタイプが生活習慣病になりやすいことがわかってきました。このタイプの肥満は皮下脂肪の増加ではなく、内臓の周りに脂肪が貯まる状態を指します。いわゆる中年以降、おなかが出てくる状態です。

これはウェスト(cm)・ヒップ(cm)(W/G)比という数値に表れてきます。この数値が男性で1.0以上、女性で0.8以上の場合は、内臓肥満の可能性が高いといわれています。

またもう一つの指標にBody Mass Index(BMI)があります(表1)。正常値は18.5〜25で、疫学的にBMIが22前後であると最も長生きできるといわれています。ちなみに現在の日本人の平均BMIは 22 近辺です。BMIが25を越えると生活習慣病になる確率は2倍以上になるといわれています。

表1

生活習慣病を防ぐために
必要なカロリーをバランス良く摂取していますか。
塩っぽいもの、油っぽいものを好んでいませんか。
実際に運動をしていますか。
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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