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ゼクトの世界へ 2 ゼクトの種類

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ゼクトは1度、あるいは2度のアルコール発酵を経て、実質アルコール度数が10%vol.以上、炭酸ガス圧が3.5バール以上あるワイン製品と定義付けられています。そのカテゴリは以下の5つです。

➀ゼクト(Sekt)

ドイツで生産されている最も低価格のゼクトは、外国から輸入したベースワインを使って造られています。主に、フランス、イタリア、スペイン産のベースワインを輸入し、ゼクトを製造しています。

➁ドイチャーゼクト(Deutscher Sekt)

ドイツ産のベースワインを100%使用したゼクトです。ブレンド規定はワインと同じで、異なる生産地のワインをブレンドすることが認められています。生産地表示がなければ、国内の複数の生産地のベースワインがブレンドされていることになります。

➂ゼクトb.A.(Sekt b.A.)

ドイツのある1つの指定生産地のぶどうから造られたベースワインを使用したゼクトです。クヴァリテーツワインと同じ品質管理の下、公的検査を受けています。エチケットにぶどうの生産地名を表記し、1生産地内の限定された地域のぶどうだけを使用する場合は、その地理的単位(エリア名や畑名)も補足表示することができます。

➃ヴィンツァーゼクト(Winzersekt)

個々の醸造所や協同組合が生産したぶどうから造られたベースワインのみを使用し、伝統製法によって造られるゼクトです。ゼクトb.A.の条件を満たしており、デゴルジュマンまで最低9カ月間、酵母の澱と一緒に熟成させます。より高品質のゼクトを生産するため、デゴルジュマンまで数年にわたって熟成させる生産者もいます。エチケットには醸造所、品種、ヴィンテージの表記が義務付けられています。個性的な商品が多く、大手生産者もこのトレンドを追い掛けています。

➄クレマン(Crémant)

クレマンはシャンパーニュ地方以外で生産されている伝統製法(瓶内2次発酵法)のスパークリングワインの名称で、フランスのほか、ベルギー、ルクセンブルクで使用が認められています。ドイツではゼクトb.A.のカテゴリに属する製品の1つで、同じく伝統製法で造られます。ヴィンツァーゼクトと同様デゴルジュマンまで最低9カ月間、酵母の澱と一緒に熟成させるなど、いくつかの規定をクリアしなければなりません。その規定はヴィンツァーゼクトよりも細かく、圧搾方法や圧搾して得る果汁の量、地域別に使用可能な品種も決められています。エチケットには、ぶどうの生産地を併記することができます。

《パールワインとは?》

パールワイン(Perlwein /ペールヴァインと発音)はゼクトと似た商品で、1990年代頃から注目され始めました。ゼクト税が掛からないため、通常のゼクトよりも安価で、現在大人気を博しています。ドイチャーワインあるいはクヴァリテーツワインから生産し、炭酸を注入することが可能です。炭酸ガス圧はゼクトより低く、1~2.5バール。すでに多くの醸造所の定番商品となっており、その多くが「セッコ(Secco)」という名称で販売されています。ドイツで人気の高いイタリア産のプロセッコをもじった名称です。

 
Weingut Fitz-Ritter & Sektkellerei Fitz KG
フィッツ=リッター醸造所&ゼクトケラーライ・フィッツ社
(プファルツ地方)

ヨハン・フィッツ
現在のオーナー、ヨハン・フィッツ(左から3人目)
父親コンラット・フィッツ(同5人目)

フィッツ=リッター醸造所は、創業1785年の家族経営の醸造所。先代には、1832年の「ハンバッハ祭」に参加したヨハネス・フィッツがいる。当時、プファルツ地方はバイエルン王国に属し、このドイツ初の大規模な政治集会には、あらゆる階層の地元民が結集して王国の圧政に抗議、1848年のドイツ革命への1つのステップとなった。現在、醸造所を率いるヨハンはカリフォルニア留学を経て2007年に醸造所を継いだ。所有畑は25ヘクタール。ワインは欧州連合(EU)のビオ認証を得ている。ミッテルハート地区の特級畑ミッヒェルスベルク、ヘレンベルク、1級畑シュピールベルクなどを所有(いずれもVDP格付け)。2013年にはヴィノテークをオープン。博物館を兼ねたセラー「Oenosphère(エノスフェール)」の見学が可能。

Weingut Fitz-Ritter & Sektkellerei Fitz KG
Weinstraße Nord 51
67098 Bad Dürkheim
Tel. 06322-5389
www.fitz-ritter.com
www.oenosphere.de


2007 Dürkheimer Abtsfronhof Chardonnay Crémant Brut
2007年 デュルクハイマー・アプツフロンホーフ、シャルドネ、
クレマン・ブリュット 18.00€

ワインフィッツ家とスパークリングワインとの関わりは深い。前述のヨハネス・フィッツは1834~35年にランスでシャンパンを生産していた人物。1837年にはプファルツ地方初の「シャンパン」を生産し、バイエルン王室に提供していた。現在も醸造所とは別に、ゼクトケラーライ・フィッツ社を経営。ラインラント=プファルツ州最古のゼクトメーカーで、開業当初から現在に至るまで、リースリングとブルグンダー種のゼクトを生産している。このクレマンは、同醸造所のモノポールである石灰岩質土壌のアプツフローンホーフのシャルドネを使ったもの。1840年当時のエチケットデザインを現在も使用している。同社のクレマンは2006年ヴィンテージからスタート。必要に応じてデゴルジュマンを行っている。現在出荷されている2007年ヴィンテージは、5年にわたって酵母の澱とともに瓶熟成されたもの。柑橘系の風味と焼き立てのブリオッシュのほのかな香り、滑らかなテクスチュアが魅力だ。


 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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