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ベルリン国立歌劇場での平和のためのコンサート

ロシアによるウクライナの軍事侵攻は、かつて東西冷戦の最前線だったベルリンの人々にも大きな衝撃をもたらしました。早くも最初の週末には大規模な戦争反対のデモが行われたほか、文化芸術の分野における動きも活発になっています。

3月6日、ベルリン国立歌劇場にて開催された慈善公演「平和のためのコンサート」に足を運びました。チケットは即日完売。2階のバルコニー席には、ショルツ首相やリントナー経済相、ベルリンのギファイ市長、さらにウクライナの人道支援を目的としたこの公演のイニシアチブを取った欧州中央銀行のラガルド総裁、ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁など多くの要人の姿がありました。

ショルツ首相をはじめ、政界や財界の要人も訪れたショルツ首相をはじめ、政界や財界の要人も訪れた

指揮者のダニエル・バレンボイムが登場し、冒頭にウクライナ国歌が演奏されました。「ウクライナの栄光も自由も滅びず」の歌詞で始まる物悲しい旋律が歌劇場合唱団によって歌われると、聴衆は自然と立ち上がりました。

その後のバレンボイムによるスピーチは、「私の祖父母はベラルーシとウクライナ出身で、20世紀初頭に反ユダヤ主義のポグロム(集団的な迫害行為)を逃れてアルゼンチンに渡りました」と自身の来歴を語るところから始まる力強い内容でした。「第二次世界大戦が欧州における最後の戦争だと信じていたのは、おそらく私だけではなかったはずです。今、ウクライナの人々がロシアの残虐な侵攻に対して勇敢に防衛している姿に心揺さぶられるのは、彼らがまた私たちの自由と価値を守ってくれているからにほかなりません」

ここで大きな拍手が起こります。しかし、バレンボイムは同時に注意を促します。「私たちは、全てのロシア人を疑惑のもとに置くというわなにはまってはいけません。ロシアの文化とロシアの政治は同一ではないからです。欧州諸国でロシアの音楽や文学を禁止・ボイコットする動きは、私には最悪の連想を思い起こさせます」。

冒頭にウクライナ国歌が演奏され、立ち上がる聴衆冒頭にウクライナ国歌が演奏され、立ち上がる聴衆

コンサートではシューベルトの交響曲「未完成」、そしてベートーヴェンの交響曲第三番「英雄」が、犠牲者の鎮魂と平和への願いを乗せるかのように鳴り響きました。

終演後に劇場から出る際、ショルツ首相が目の前を通り過ぎて行きました。その後に立ち寄ったロシア大使館前では、人々がダンスで無言の抗議をしています。ベルリン中央駅にはポーランド経由でウクライナから避難してきた人たちと、それをサポートする人たちで溢れていました。地続きの欧州で起きている危機的な現実を、これほどリアルに感じた1日はありません。

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(学研プラス)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
守屋健(もりやたけし)
ドイツの自動車、ビール、そして音楽に魅せられて、2017年に渡独。現在はベルリンに居を構えるライター。健康維持のために始めたノルディックウォーキングは、今ではすっかりメインの趣味に昇格し、日々森を歩き回っている。
守屋 亜衣(もりや あい)
2010年頃からドイツ各地でアーティスト活動を開始し、2017年にベルリンへ移住。ファインアート、グラフィックデザイン、陶磁器の金継ぎなど、領域を横断しながら表現を続けている。古いぬいぐるみが大好き。
www.aimoliya.com
佐藤 駿(さとう しゅん)
ドイツの大学へ進学を夢見て移住した、ベルリン在住のアラサー。サッカーとビールが好きな一児のパパです。地元岩手県奥州市を盛り上げるために活動中。
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