夏が始まる前、長年ベルリンに住んでいる友人が「今年の夏は暑くなさそうだね」と言っていました。そのときは、異常気象が続いているし、夏なんだから暑くなるだろうと思っていましたが、蓋を開けてみれば、本当に友人の言う通りになってしまいました。夏真っ盛りのはずの7月のベルリンは、曇り時々雨の不安定な天気ばかり。気温も上がらず、一体夏はどこへ?と首をかしげています。それでも、たまに現われる夏のまばゆい一瞬には、やはりこの時期にしかできないことをしたいですよね。
シュラハテンゼーでボートに乗って楽しむ人々。SUPやカヌーをして泳がずにぷかぷかする人をいつもうらやましく眺めています
ベルリンで過ごす夏といえば、やはり湖で泳ぐことではないでしょうか。ベルリンには約80の湖があるようで、お気に入りの湖も人ぞれぞれ。知り合いから「今週はここに行ったよ」と教えてもらって、そんなところに湖が! と気づくことも。ベルリンに拠点に置く出版社The Gentle Temperから昨年刊行された『Take Me to the Lakes - Berlin Edition』には、厳選されたベルリンの50の湖と200以上の遊泳スポットが、場所に関するテキストと写真、地図と共に掲載されています(ベルリン版だけでなく、ライプツィヒやフランクフルトなど九つの地域ごとにフォーカスしたバージョンも出版されています)。今週はどこの湖に行こうかなと迷う人や、まだ見ぬ湖に出会いたい人にはぴったりの1冊です。
Haus am Waldseeには彫刻公園もあり、作品が定期的に入れ替わります
私は、友人と集まりやすいということもあり、ベルリンの西に位置するSchlachtensee(シュラハテンゼー)に行くことが多いです。アクセスの良さゆえ比較的人が多い湖かもしれませんが、場所を探せばゆっくりとした時間を過ごすことができます。また、湖の周辺はベルリンでも屈指の高級住宅地なので、ベルリン市内ではなかなか見ることのない大きなお屋敷を目にすることができます。近くには、第二次世界大戦直後の1946年にオープンした現代美術館「Haus am Waldsee」があり、泳ぎ終えた後にアートに触れることもできます。
さらに先日は、少し足を伸ばしてベルリン北部に位置するLiepnitzsee(リープニッツゼー)を初めて訪れました。ブナの木が生い茂る森を歩き到着した湖は、主に湖の北西部にある湧き水から供給されているようで、とても美しく透き通っていました。
リープニッツゼーには、グローサー・ヴェルダー島という小さな島があり、キャンプ場とフェリー乗り場など、アクティビティも充実しています
空を仰ぎながら静かに水に浮かんでいると感じるのは、地球に優しく包まれているような不思議な安心感です。長い時間をかけて少しずつ培われた湖の水や、ほとりに生える木々の中に、数十年生きただけの自分が存在できていることのありがたさ。生活しているとつい忘れてしまうその気持ちを、湖は思い出させてくれる気がします。そして、毎日大変なこともあるけれど、ベルリンに来て良かったなあと心から思える瞬間でした。