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グラフィティ

「グラフィティ」という名前は近年、徐々に認知されてきていますが、所詮は公共物や個人の所有物に無許可で描かれる違法な落書きであることが依然として多いのが実状です。

グラフィティの発端は、1970年代にニューヨークの地下鉄や建物の壁にスプレーやペンなどを用いて描かれた落書きですが、やがて技術も表現力も向上し、単なる落書きではなく前衛芸術のように扱われるようになりました。現在でも回顧展が開催され、そしてポストカードでお馴染みのキース・ヘリングやバスキアといった若き人気アーティストの登場によって、グラフィティは広く知られるようになったのです。水戸芸術館では、2005年に「X-COLOR/グラフィティ in Japan」が開催され、普段は半ば違法に描いている38人のアーティストが、展覧会の会場で合法的に作品を描きました。

この連載でたびたびご紹介しているオイセレ・ノイシュタット(Äußere Neustadt)は、実はグラフィティの宝庫です。もちろん、建物の外壁や公園のベンチなど、「スキあらば」といった感じの雑に殴り書きされたものがほとんどで、この地区に雑然とそして多少荒れた印象を与えています。しかし最も目を引くのは、建物の側面いっぱいに描かれたグラフィティ。4、5階建てアパートの側面を切り取ったような大壁面は、下手をすれば街の風景を殺風景にすると同時に高圧的な雰囲気を生み出しかねないものですが、そこに見事なグラフィティ(この場合は依頼によって描かれたもの)があると圧巻です。その規模の大きさと様々なモチーフが入り乱れて描かれている様子は、ローマ・バチカン宮殿内のシスティーナ礼拝堂にある、400人以上の人物が描かれたミケランジェロの傑作「最後の審判」(1541年完成)に匹敵するのではないかと思うほどです。

グラフィティ
描かれているモチーフの多さと規模にびっくり!

また、トロンプ・ルイユ(騙し絵)という錯覚技法も時々見かけます。例えば、建物の側面が壊れてレンガがむき出しになっているその向こうに、フランスの画家アンリ・ルソーの楽園的風景が広がっています。近付いてみると、周囲の壁部分は既存のもので、その上にレンガと風景が描かれているのが分かります。さらに、一番賑やかな交差点の近くに、これでもかとばかりに落書きとグラフィティがぎっしりと並んでいる場所があります。最近では、今年6月25日に急死して世界を驚かせたマイケル・ジャクソンを描いたグラフィティもありました。時々描き替えられるグラフィティもあり、それを発見すると得した気分になります。街角で偶然アートに出会えるというのは、本当にすばらしいものです。

グラフィティ
2. 壁の裂け目から風景が見える

グラフィティ
マイケル・ジャクソンへの追悼画

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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