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エーリッヒ・ケストナー・ミュージアム

エーリッヒ・ケストナー(1899~1974)は、日本では児童文学の作家としてよく知られていて、小学校の図書室には必ずと言ってよいほど『エーミールと探偵たち』『ふたりのロッテ』『点子ちゃんとアントン』が置いてあります。

大学卒業後、ベルリンで詩人としてデビューしたケストナーは、ユーモアと風刺精神あふれるパロディや作品を多く発表しました。また、父親がユダヤ人で反ナチの立場をとっていたため、ナチス政権下では著書が焚書(ふんしょ)の対象となるなど、世界中の子どもたちに愛されるケストナーおじさんのイメージとは違った側面も持っています。

ヴィラ・アウグスティン
瀟洒(しょうしゃ)な ヴィラ・アウグスティン

ケストナー・ミュージアムは彼の生誕101周年を記念して、2000年2月23日にヴィラ・アウグスティン(Villa Augustin)にオープンしました。このヴィラはケストナーの叔父の家で、ノイシュタットのアルベルト広場に面しています。この広場から北に伸びるケーニヒスブリュッカー通りにはケストナーの生家もあり、まさにこの辺りには彼の幼少期の原風景が広がっています。『わたしが子どもだったころ』には、ここで過ごした彼の少年時代の出来事が綴られており、かつてのドレスデンの様子が生き生きと描かれています。少年の日のケストナーは、叔父の家の塀の上に座ってアルベルト広場を眺めているのが好きだったようで、現在その弊の上にはブロンズ像のケストナーが座っています。

このミュージアムの展示方法は独創的です。展示室は13本のモジュール(柱)で構成されていて、1本のモジュールには多くの引き出しや扉がついています。引き出しや扉はテーマ別に色分けされており、写真や手紙、公的資料、演劇のプログラムなど、ケストナーの人生と作品に関する「手掛かり」が収められています。来館者は順番に、色別に、あるいはランダムにこれらの手掛かりを引っ張り出して閲覧し、再び元に戻します。その作業を繰り返すことにより、来館者が自分自身のケストナー像を作り上げることが狙いだそうです。何やら難しそうですが、ケストナーが愛用したタイプライターやスーツ、帽子などの遺品を観賞していると心が和みます。

モジュール
色分けされた引き出しや扉のついたモジュール

これら13本のモジュールは1つに集合させると縦3m×横1.2m×高さ2mのコンパクトなキューブとなります。これがアイルランド出身の建築家ルアイリ・オブリエン(Ruairi O’Brien)による世界初の可動式自己体験型ミクロミュージアム(micromuseum)です。キューブ状態にすることでスペースを確保することができるため、そのスペースを利用して朗読会や映画上演などが定期的に開催されています。同じコンセプトによるミュージアムが「海外派遣ミクロミュージアム展」として2005年の東京を皮切りに現在、世界中を旅しているようです。

エーリッヒ・ケストナー・ミュージアム
www.erich-kaestner-museum.de

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/
 
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