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復活祭に生きるソルブ文化

春の香りが漂い始める頃、ドイツでは各地で復活祭を迎えます。ドレスデンより東のあたりでは、伝統的な復活祭が今も行われています。今回はブランデンブルク州の南からザクセン州の東にかけてのラオジッツ地域に生きる少数民族ソルブの文化を、復活祭を通して紹介しましょう。

スラブ系の根源をもつソルブ民族(Sorben/ Wenden)は、元々ザクセン州の幅広い地域で生活していましたが、10世紀末よりドイツ語やその文化に押され、縮小の一途をたどってきました。現在は、バウツェンやコトブスを中心とした地域に、約6万人のソルブの人々が暮らしています。街にはソルブ語とドイツ語の二言語表記標識、ソルブ語の学校や学習センターがあり、言語や伝統を積極的に維持し伝えていく努力が行われています。

騎馬行進
復活祭の騎馬行進

現在見ることのできるソルブ文化は、土着のスラブ文化とキリスト教文化の混合であり、クリスマスや復活祭などキリスト教由来の行事も多く残ります。とりわけ有名な行事の一つに、復活祭の騎馬行進(Osterreiten)があります。復活祭の日曜日、黒の衣装にシルクハットをかぶったカトリックの男性たちが飾りの付いた馬に乗って、教区から教区まで行進します。近年では1500人以上の参加者が、聖歌を歌いながらラオジッツの街々を行き交います。元々は、耕地で呪術的な円上を騎馬が練り歩き豊穣を願う儀式でしたが、キリスト教の影響により、神に祝福を請い、イエス・キリストの復活を隣の教区へ知らせるために行進するようになりました。古いしきたりで、それぞれの教区を出発する騎馬の列は途中で互いに出会うことがないようになっています。

特徴的な文化をもう一つ挙げれば、精緻な装飾の卵でしょう。ソルブの人々は、成長と豊饒の象徴である復活祭の卵を、巧みな技術で美しく装飾します。ガチョウの羽ペンを使い規則的な模様を描いたり、ろう付け染めで色を付けたり、腐食法で柔らかい輪郭を入れるなどさまざまな技術があります。こういった技術や模様は親から子へと受け継がれ、装飾の作業が家族の団らんの一つともなっているのです。

復活祭卵
ソルブの人々が施す精緻で美しい復活祭卵の装飾

一部のソルブの女性は今も伝統的な衣装を着て生活していますが、民族衣装は彼らにとって礼式を表すための媒体であり、同時に地域の差異を示すアイデンティティの表現でもあるのです。生地の細部まで丁寧にほどこされた繊細な刺繍や色とりどりの飾りは、ソルブの人々が生活や習慣を大事にして毎日を送っている象徴のように見えます。

ソルブ博物館:http://sorbisches-museum.de

勝又 友子
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。
 
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