Hanacell

レリンゲン・ミサ曲の初演

ドイツの偉大な作曲家として知られるヨハン・ゼバスティアン・バッハ。しかし、彼は生前、作曲家としてではなくオルガニスト、そしてライプツィヒのトーマス教会の音楽監督(礼拝や結婚式、葬儀など教会での行事における音楽面の責任者)として活躍していました。バッハはコンサートのためではなく、自分が勤める教会の礼拝のために新しい曲を書き、結果としてそれらの曲が代々受け継がれて、彼は偉大な作曲家として名を残すことになったのです。

現代も、各教会で音楽監督は活躍していますが、かつてのバッハのように自分の教会のために新しい曲を作っている音楽監督は、ほとんどいないのではないでしょうか。そんな中、ハンブルクの北西に位置する小さな町レリンゲン(Rellingen)で、レリンゲン教会(Rellinger Kirche)のために新たな曲が作られました。曲名は「レリンゲン・ミサ」。その初演を鑑賞して来ました。

演奏するレリンゲン教会聖歌隊
作曲家の指揮の下で演奏するレリンゲン教会聖歌隊

作曲者は、同教会の音楽監督であるオリバー・シュミット氏。彼はもともと、「素晴らしいミサ曲はこれまでに多数完成しているので、それに付け加えるものは何もない」と考え、自分が新たに曲を作るつもりはなかったそう。ところが、2011年4月にレリンゲン教会の音楽監督に着任し、その後期バロック様式の教会堂に足を踏み入れた瞬間、一風変わった独特な構造からインスピレーションを得て、作曲を思い立ったと言います。

オルガンを演奏するのシュミット氏
レリンゲン教会のオルガンを演奏する作曲家のシュミット氏

同教会は正八角形で、中央に洗礼盤が据えられています。そしてその真上の円天井には、神の三位一体を表す三角形の中に、神の目が描かれています。さらに、通常は正面に置かれている十字架のキリスト像が、この教会では出口の上に掲げられているのです。ここから彼は、「始まりと終わり」という線ではなく、「神を中心に常に回帰する」というミサ曲を貫く テーマを思い付きました。それから半年後には曲の大部分が完成し、2012年5月26日には、簡素化されたバージョンで一応の初演が行われ、今回2013年10月12日に、作曲者の指揮により、完成バージョンで初演される運びとなりました。

ラテン語のミサ典礼文に曲を付けた「レリンゲン・ミサ」は、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、バリトンソロ付きの、オルガン伴奏の合唱曲で、現代フランスの作曲家プーランクなどの曲の響きにも似ており、演奏者の技を要する大曲でした。作曲者の意図と信仰がよく表れた意欲的な曲でしたので、「100年後もバッハの曲のように演奏されているかしら?」と楽しみになりました。

井野さん井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
 
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