Hanacell

フンデルトヴァッサー設計のカフェが復活

オーストリアの美術家であり建築家でもあるフンデルトヴァッサー(Friedensreich Regentag Dunkelbunt Hundertwasser、1928~2000)の名を知る人は多いことでしょう。色鮮やかで曲線を多用した彼の建築様式は独特で、彼は「自然の中に存在しないものは、無機質な直線である」と訴え、渦巻きや流れる曲線の中に、自然への回帰を見出したといいます。日本にも彼の設計した建築物がいくつかあり、東京・赤坂にある、文字盤が漢字で表示されている「21世紀カウントダウン時計」や、大阪市のごみ処理場「舞洲工場」をご覧になった方もいることでしょう。特に、大阪のごみ処理場の奇抜なデザインは、遠くからでも人目を引きます。風呂敷のデザインをしたこともある彼は、日本では、ドイツ語名を日本語に直訳した「百水」という雅号を用いていたそうです。

そのフンデルトヴァッサーの手になる建築物が、実はハンブルクにもあるのです。1998年、デザイナーのユーレ・ベックと共同設計した「シュタットカフェ・オッテンゼン」がそれです。流れる曲線の特徴的な外壁は、見る人が見ればすぐにフンデルトヴァッサーだと分かるものです。カフェと銘打ってはいますが、実質的にはレストランで、伝統的なドイツ料理を提供して賑わっていました。

ところが2009年、この建物は倒壊の危機に陥ります。建物自体を集合住宅として建て直すことが決まり、このカフェも残念ながら閉鎖されてしまいました。しかし地域住民は、「フンデルトヴァッサーの外壁が取り壊されてしまうのは惜しい。これを残してほしい」と反対運動を展開しました。その結果、外壁と内装の一部を残して、カフェが再建されることになったのです。

ハンブルク
集合住宅1階部分に残されたフンデルトヴァッサー設計の外壁

今年7月に新装オープンした「シュタットカフェ・オッテンゼン」は、以前よりも明るい雰囲気になり、提供される料理は、伝統的などっしりとしたドイツ料理から、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ、中近東料理)や、フラムクーヘン(アルザス地方の薄いピザのようなもの)などインターナショナルで、変化に富んだものになりました。中でも驚いたのは、メニューに「TEMPURA」という文字が入っていたことです。「天ぷら」は「寿司」同様、今や世界共通語になったのでしょうか?

ハンブルク
カフェ内部にも曲線が生かされています

多少の変化はあるものの、フンデルトヴァッサーらしい特徴も随所に残っていて、以前からのこのカフェのファンは喜んでいることでしょう。簡単に諦めてしまわないで声を上げることを、こうしたドイツ人の姿勢に学びたいです。

Stadtcafé Ottensen
www.stadtcafe-ottensen.de

井野さん井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?

 
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