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大学の卒業公演でオペラ「エフゲニー・オネーギン」

ドイツ各都市には音楽大学があり、なかには美術部も兼ね備えた芸術大学も多いことでしょう。ハンブルクは音楽演劇大学(Hochschule für Musik und Theater)となっており、音楽科とともに演劇科がありますので、ほかの音大よりもオペラへの取り組みに重きが置かれているように感じます。

昨年末には、演劇科の卒業演出プロジェクトとして、音大の学生たちとチャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」が上演されました。一般のオペラハウスでも、新演出にするなら、オーソドックスなものでなく、新しいアイデアを盛り込もうと、時には奇抜な演出がなされています。これが卒業公演なら、ますます前衛的な演出になるのでは? と思いつつ出かけました。

エフゲニー・オネーギンは、主人公の名前。友人とともに訪れた家でタチアナという少女と出会うのですが、彼女の方がオネーギンに一目ぼれ。その想いを手紙に託すのですが、オネーギンは「あなたはまだ幼い」とその想いを退けます。ところが年月が経ち、美しく成長し人妻となったタチアナに再会すると、今度はオネーギンがタチアナに惹かれるのです。しかしタチアナは「時は変わり、私には既に夫があります」と彼の想いを退けるというストーリーです。

左端がオネーギン役のチェンさん
左端がオネーギン役のチェンさん

演出と舞台構成担当のミーン・ボゲールさんは、この話を1980年代、崩壊前のソビエトと、その後、資本主義に移ったロシアというコンセプトで演出しました。オネーギンはアメリカでポップ・アートを学んだアーティストという設定で、ほかの人々が野暮ったい服装でつつましい生活をしているなか、独りロックスターのような、退廃的な雰囲気でした。ロシア時代になると、ごちそうとシャンパンのパーティー、美容整形による容姿の美しさへの傾倒など、資本主義の流入による、行き過ぎた享楽主義が表現されていました。

こういう、はっきりとした意図を持った演出をどう捉えるかは、個々人の好みに大きく左右されるところですが、音大の学生たちによる演奏自体は、十分に聴き応えがありました。オネーギン役のホンギュ・チェンさんはとても魅力的な声の持ち主。タチアナ役のブリッタ・グラーザーさんは、ピアニシモを響かせることのできる、素晴らしいソプラノでした。数年後には、彼らの歌声をオペラハウスで聴けるのではと思います。

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拍手を受ける出演者、オーケストラの皆さん

オーケストラは、チェロもコントラバスも1人ずつという小編成でしたが、若手音楽家の杉本優さんの指揮の下、実に美しい音色で、息の合った演奏を聴かせてくれました。彼らの今後の活躍に期待したいと思います。

井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
www.nd-jcf.de
www.facebook.com/ndjcf

 
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