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ハノーファーでVWバン製造60年

ハノーファー歴史博物館で6月26日まで、「ブリー製造工員:ハノーファー産のVWバン誕生60年(Die Bullibauer:60Jahre Volkswagen-Transporter aus Hannover)」が開かれています。ハノーファー郊外シュトッケンにあるフォルクスワーゲン(VW)工場では、ちょうど60年前からバンが製造されており、戦後のハノーファーの発展に大きな役割を果たしました。

ブリー製造工員展入り口
展示会の入り口

VWのバンは、ドイツではブリー(Bulli)という愛称で親しまれています。ハノーファーから東へ80キロほどの本社があるヴォルフスブルクでは、すでに1950年からブリーの製造が始まっていました。しかし戦後の経済成長により、VWビートルの傍らで製造するのでは供給が追いつかない状況でした。そこでVW本社は、ハノーファーに新しい工場を建てることを決定。1年かけて建設し、1956年に工場稼働となりました。当時は4000人が、1日230台のバンを製造しました。バンは大きな人気を呼び、1962年には累計100万台を達成しました。1971年には従業員3万人が、1日にバン1100台のほか、最大7500台のエンジンを製造するまでとなりました。

これまで世界各国で1200万台の同シリーズのバンが製造されましたが、そのうち950万台はハノーファー産です。現在は1万4000人の社員と750人の職業訓練生が従事しており、ハノーファー最大の雇用主となっています。

歴史博物館の展示会場では、クラシックのブリーが並び、見る人のノスタルジーをそそります。古い写真や文書、絵から、当時の仕事ぶりが伝わってきます。パンやビール、コーヒー豆などの食品や、冷蔵庫やテレビ、レコードプレーヤーなどの家電製品を運ぶのにブリーは最適だったため、職人や小売店が、コンパクトで積載容量の大きいブリーを愛用しました。特に地元であるハノーファー市民にとって、ブリーは格別な存在だったのだと感じられます。車という工業製品が生活の中に入り込み、文化となったのです。

ブリー
新旧のブリーが並ぶ会場

会期中、講演会や朗読など様々な催しが開かれており、当時の工員による展示会案内もあります。週3回、VWの職業訓練生が、授業の一環で訪れる子どもたちに車両製造の面白さを伝えています。

入場料は大人5ユーロ、12歳以上の生徒や学生4ユーロ、5歳から11歳まで1ユーロ。金曜日は無料。

公式サイト: www.historisches-museum-hannover.de

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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