私が住んでいるドイツ東部のザクセン州には、ザイフェン(Seiffen)というエルツ山地の人口2000人ほどの小さな村があります。くるみ割り人形や煙出し人形、クリスマスピラミッドなど、ドイツの冬を彩る木工品の多くがこの村で生まれ、「おもちゃと木工の村」として知られています。
昨年、ケムニッツが欧州文化首都になって以来、私はザクセン州のものづくりコミュニティとの関わりを深める機会に恵まれてきました。その中で知ったのが、ザイフェンの工房「Denkstatt」に滞在して制作をするレジデンシープログラムです。「Denkstatt」とは、考える(denken)と工房(Werkstatt)を掛け合わせた造語で、その名の通り、エルツ山地の伝統技術を学びながら、考え、制作するための場所です。
ザイフェンの丘の上にある工房Denkstatt
もともと木という素材が大好きで、木工の腕を磨きながら自分の作品の試作をしたい、夏休みなら家族も遊びに来やすいし……と、このレジデンシープログラムに応募することに。無事選考を通過し、7月から1カ月ほどザイフェンに滞在して制作をしました。同じ時期には、ライプツィヒとヴァイマール在住の女性クリエイター2人も参加。日々お互いのアイデアや作品について話し、見せ合い、インスピレーションをもらっていました。
プログラムでは伝統技術を紹介する博物館の見学も
ザイフェンの朝は早く、工房勤務の人に聞くと、仕事は6時台から始まることもあるとか。滞在しているレジデンシーも、朝7時から木工旋盤(Drechselbank)の練習を始められるという、ものづくり好きには夢のような環境です。都市部ではないので、ドイツ語だけでやっていけるか、保守的な土地柄ではないかと少し心配していましたが、ゆったりした穏やかな方が多く、私のドイツ語にも忍耐強く付き合ってくれます。何より、ものづくりが共通言語になり、言葉が少なくても通じ合えるのを心地良く感じています。Denkstattのレジデンシーは毎年開催されているので、興味のある方は、Denkstattのウェブサイトやインスタグラムをぜひのぞいてみてください。
手を木に慣らすために削ったロバたち
ザイフェンに滞在してみて、村中がくるみ割り人形やクリスマスピラミッドに彩られる、クリスマスシーズンにもぜひザイフェンを訪れたいという思いが強くなりました(本誌1182号特集「ザイフェンの木工おもちゃに会いに行く」もぜひ!)。ただしその人気は絶大で、2年先まで予約が埋まっている宿もあるそう。幸い、私の住むライプツィヒからは、電車とバスを乗り継いで、なんとか日帰りが可能。遠方の方は、ライプツィヒやドレスデン、ケムニッツに宿を取り、ザクセンを周遊旅行するのもおすすめです。
IT系の翻訳者・プログラマー。オーストリア、インドを経てドイツへ。ライプツィヒには2016年より在住。三度の食事と、手に入らない食材を自分で育てるのが何よりの楽しみ。古巣のアート分野に戻りつつある。



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック




