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「分ける」ことを受け継ぐ子どもたちの提灯行列

ドイツの秋は「提灯」を持って街を練り歩く季節(Laternenumzug)でした。お子さんがドイツの幼稚園に通っている、もしくは通っていたご家族はご存知だと思いますが、子どもたちが手作りの提灯に火を灯して、暗くなりかけた頃に歌いながら散歩する行事があります。お住まいの地区で見かけられた方も多いと思います。

11月10日(州によっては11日)は「聖マルティンの日(Martinstag)」として、あちこちの幼稚園でこの提灯行列が行われました。マルティンとは4世紀ごろのカトリック教徒で、貧しい人や困っている人たちに物や食料などを分け与えて支えていました。寒さで凍えている人には自分のマントを与え、空腹で倒れている人には食べ物を分け与えます。夕暮れが早まる秋から冬に変わる時期に、薄暗い街中を提灯の灯りを手に食べ物を分け与える風習が伝えられ、現在でも受け継がれているのです。現代では食べ物こそ配って回ることはありませんが、子どもたちが中心になって手作りの提灯を下げ、「Laterne、 Laterne〜」と歌いながら近所を歩いて回ります。

手作りの提灯に火をつけて待つ園児たち
手作りの提灯に火をつけて待つ園児たち

わが家の2人の娘はニコライ教会の幼稚園に通い、毎年提灯行列は幼稚園のほぼ全員が参加して地域の教会で行われています。2週間ほど前から提灯を作りはじめ、毎年工夫を凝らした小さな手作りの提灯で行事に参加するのを私も楽しみにしています。

教会では子どもたちによる聖マルティンにまつわる劇に始まり、賛美歌を歌い、「分ける(teilen)」ことがいかに大切かという話を牧師さんから聞きます。その後で、教会を出てそれぞれの提灯に火をつけて地域を1時間ほど歌いながら歩きます。風が強いとろうそくの火もすぐに消えてしまうので、最近はLEDライトを使う人がほとんどです。提灯は製品として買えるものも多くありますが、私たちの地域では製品を使うのは一部の人たちだけで、ほとんどの子どもたちが手作りの提灯を下げて歩いています。散歩から戻って来ると、子どもたちには温かいココアと「マルティンのパン」が無料で配られ、大人たちはその年初めてのグリューワインを飲みます。このパンは、それこそマルティンにならって「分ける」ことを大切にしているので、子ども1人に一つではなく、地域のボランティアの人たちが子どもたちにあえてパンを半分にちぎりながら「みんなで分けましょうね」と言って渡します。これからもずっと子どもたちに受け継いでもらいたいすてきな伝統だと思います。

教会でのマルティン劇(影絵)
教会でのマルティン劇(影絵)

ミンクス 典子
福岡県出身。日独家族2児の母。「働く環境」を良くする設計を専門とする建築家。2011年より空き家再生社会文化拠点ライプツィヒ「日本の家」共同代表。15年より元消防署を活用した複合施設Ostwache共同代表。
www.djh-leipzig.de
 
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