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芸術性の高い人形?劇

シュトゥットガルトには「Fitz」という人形劇専門の劇場があり、長い間、子供向けのものだと思い込んでいました。こうした劇場をドイツ語で「Figurentheater」といいますが、実は大人向けの舞台もあるとつい最近聞き、「3Akte(3つのアクション)」というものを見てきました。

舞台「3つのアクション」のポスター
舞台「3つのアクション」のポスター

「Fitz」は、最近の劇場っぽく床も壁も天井もすべて真っ黒で、舞台はダンスの舞台に近い大きさです。片隅にいろんな電子楽器に囲まれた男性がいて、舞台に合わせて音楽を生演奏するようです。しかし肝心の「人形」はどこにも見当たりません。

入場したときから一人の女性が舞台の真ん中にいて、ほうきで普通に床を掃いていました。まだ準備中なのかと思いきや、観客全員が着席するや否や彼女が話し始めました。この女性はどうも今日の主役で、自分はしばらく日本に行ってきたという話をしました。これは奇遇だなと思っていると、突然女性はぬれたモップを持ち出してきて、床に大きな漢字の「無」を書きました。書き終わると同時に、照明は徐々に薄暗くなり、女性は暗闇に溶け込んでいきます。

次第に大きな「無」の字がゆっくりと蒸発して消えていきます。そして、まさに「無」が消えたとたん、女性が大きな丸い紙をじゅうたんのように勢いよく広げました。紙は何層にもなっているようで、女性が一枚目の下に寝そべりながら入ったではありませんか!

しばらく沈黙が続いて、まったく姿の見えない女性が動き始めました。紙が少しずつシワを寄せ始めて、山のような模様を作り出します。紙が鳴る音と共に音楽もこのとき鳴り始めて、「山」が次第に一方向へと回転し始めました。「紙の山」がまたさらに回転していくうちに、高さがどんどん増し、いつの間にか踊り始めたのです。本当に驚きました! ここで、初めて「Puppentheater( 人形劇)」ではなく「Figurentheater」である意味が分かったような気がします。必ずしも人間の形をした人形の劇ではなく、人間の役者と、ある「Figur(像)」との共演のようです。

小道具に使われていた巨大折り紙
小道具に使われていた巨大折り紙

次の第二幕は、役者と2メートルの高さの外套(コートのようなもの)と大きな動物の頭蓋骨との共演でした。外套には4本の支えが入っていて、自立できるようになっています。また、脇から腕の部分に役者の手が通せるように細工してあり、これで見事に外套に人格が宿ったように見えました。さらに第三幕では、役者自身が折り紙を折りながら登場し、次には何メートルもの長さの巨大な折り紙を身にまといながらねじったり踊ったり……。どこか日本的で懐かしいと思う部分と、大胆で奇抜な発想とで私たちの心をしっかりとつかんでいました。1時間半ぐらいの舞台でしたが、じっと見入ってしまい、本当にあっという間でした。
www.fitz-stuttgart.de

郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com
 
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