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州立美術館で小さな浮世絵展に出会う

 

シュトゥットガルト州立美術館(Staatsgalerie)では毎週水曜日、館内のコレクションが無料で一般公開されています。ピカソやダリ、マックス・ベックマン、モンドリアン……美術にそう詳しくなくても誰もが知っている著名なアーティストの作品があちこちで見られます。

コレクションは旧館と新館に分かれていて、クラシックな絵画と、20世紀以降のモダンなアートがそれぞれ展示されています。モダンアートが展示してある部屋の一番奥にはグラフィックコレクションの部屋があり、いつも小さな特別展が開催されています。

実は2月3日から6月18日まで当美術館のコレクションである浮世絵の一部が展示されていました。オープンニングに間に合わず残念でしたが、先日やっと作品を見ることができました。展示タイトルは「世界の彼方から(Ans andere Ende der Welt)」。葛飾北斎や歌川派などの作品数十点が並んでおり、東海道五十三次の一部や北斎の妖怪漫画がありました。展示の特徴は画家ごとに分けるのではなく、違う作家同士の絵を同じテーマごとにまとめ、一つのブロックとして見せたり、ヨーロッパ人画家の作品と一緒に並べられるというユニークなもの。あのフィンセント・ファン・ゴッホがかつて浮世絵に大きな感銘を受け、作風にも影響を受けたという話は有名ですが、実は20世紀初頭においてほかにも何人ものヨーロッパ人画家が密かに浮世絵を研究し、なんらかの模倣を試みたのかもしれません。実際にこうやって並べてみると、東洋と西洋の表現の仕方の違いがとてもはっきり見えてきます。

東洋と西洋の作品が比較できる
東洋と西洋の作品が比較できる

東洋の作品は雰囲気や曖昧さの美学に則った抽象度の高い絵になり、逆に西洋の作品は、古代ギリシャ哲学から受け継いできた分析的なものの見方に則った、より写実的なものが特徴です。

シュトゥットガルト州立美術館は1843年に建設され、1984年に新館がオープン。主に20世紀以降のアートを集めてきましたが、現在では地方美術館の域をはるかに越えて、質量ともに欧州でも屈指の美術館になりました。新館の設計者はジェームズ・スターリングという英国人の建築家で、ル・コルビュジエなどのモダニズム建築の研究に基づいていますが、形状や色彩はより華やかなものとして有名です。美術館の床はビビッドグリーンで、ドアに大胆な赤を使っています。また床はレゴのような凹凸があったり、くねりとした窓ガラスも斬新。この建物は未だ賛否両論あるらしいですが、来場者に一回見たらなかなか忘れられないほどの強烈なインパクトを与えています。

浮世絵展はすでに終了していますが、ぜひ一度、水曜恒例の無料一般公開に足を運んでみてはいかがでしょうか。

www.staatsgalerie.de

ミニマルアートの展示スペース
ミニマルアートの展示スペース

郭 映南
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com
 
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