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副鼻腔炎(蓄膿症)の多様な症状

最近、鼻が詰まることが多く、同時に顔の頬が痛く感じることがあります。自分は花粉症と思っていましたが、友人から蓄膿症ではないかと言われました。蓄膿症とはどんな病気でしょうか。

Point

  • 副鼻腔の炎症により膿(うみ)が溜まった状態。
  • 風邪、アレルギー性鼻炎、虫歯などが原因。
  • 鼻汁、鼻づまり、顔や頭の痛みが出現。
  • 疲労感、集中力低下の原因にも。
  • 風邪や鼻炎を悪化させないことが大切。
  • 治療は薬剤、鼻腔の洗浄、手術療法など。

副鼻腔炎はどんな病気?

●急性の副鼻腔炎とは
黄色の鼻汁・鼻づまり・顔の痛み、頭痛がみられる副鼻腔の粘膜の炎症のうち、1~2週間程度で治る一時的なものが「急性副鼻腔炎」です。多くは風邪のウイルスや細菌感染の後に続いて起こります。副鼻腔炎はドイツ語で「Sinusitis」、もしくは「Nasennebenhöhlenentzündung」という長い呼び名もあり、日本語の「副鼻腔炎」はこれを直訳したものです。

●慢性の副鼻腔炎と「蓄膿症」
急性の副鼻腔炎を繰り返し、副鼻腔の炎症が3カ月以上続くものが「慢性副鼻腔炎」です。そして、副鼻腔に膿(Eiter)が溜まった状態を「蓄膿症(Empyem)」といいます。

●副鼻腔炎の引き金は?
ウイルスや細菌の感染、アレルギー性鼻炎などが、副鼻腔炎の引き金となります。また、虫歯(特に副鼻腔と接する上の奥歯)が原因になることもあります。

副鼻腔炎をきたす要因

●アレルギー性鼻炎との関係
副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎とは異なる病気です。しかし、鼻(鼻腔)と副鼻腔は、非常に細い自然孔(しぜんこう)でつながっており、この部分に炎症が波及すると、粘膜が腫れて、通り道がすぐにふさがってしまいます。そのため、アレルギー性鼻炎のある人は風邪から副鼻腔炎を起こしやすいとされています。

●顔面に8カ所ある副鼻腔
顔の下の広い範囲にまたがって位置する、左右4カ所、計8カ所の空洞が副鼻腔です。各々、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)と呼ばれます。副鼻腔の働きには、顔への外力を弱める、吸気の加湿、ろ過、声の共鳴作用、免疫と関係するというような諸説がありますが、あまりよく分かっていません。

副鼻腔炎の症状

●顔の痛み、頭痛、頭重
炎症のある副鼻腔によって異なる場所の痛みが生じます。例えば、頬や歯の痛み、目の周囲の痛み、額のあたりの痛み、頭重感です。

副鼻腔炎の位置と症状

●鼻汁と後鼻漏
ドロッとした粘調性の黄緑色の鼻汁(Nasensekret)が出ます。鼻腔の後ろから喉に流れる鼻汁(後鼻漏 こうびろう)は、しばしば痰(たん)として自覚されます。長引く咳の原因が後鼻漏であることもあります。

また、炎症による鼻腔の粘膜の腫れと鼻汁により、鼻づまり(verstopfte Nase)を生じます。口で呼吸するため、口内の乾燥や扁桃腺や咽頭の炎症を来たし、副鼻腔炎の治りを遅らせることもあります。これらはいびきの原因にもなり、長引くと睡眠時無呼吸(ドイツニュースダイジェスト1月22日発行1018号掲載)と関わってくることもあります。

●花粉症との違い
花粉症(Heuschnupfen)の場合はサラサラした鼻汁で、目のかゆみやくしゃみを伴うことが多いのに対し、副鼻腔炎では目のかゆみはなく、黄色の粘度の高い鼻汁が出るのが特徴的です。花粉症が副鼻腔炎の引き金になることもあります。

花粉症との相違点

●味覚と臭いの変化、口臭
鼻腔の粘膜の炎症と鼻づまりから、食べ物の味が変化したり、臭いが分からなくなることも。悪臭をともなった鼻汁のため、口内に広がる嫌な臭いや、生臭い口臭(Mundgeruch)を自覚することもあります。

●鼻ポリープ(Nasenpolyp)
慢性副鼻腔炎の5〜10人に一人にみられます。鼻腔粘膜の一部がポリープ状に腫大した良性のできもので、鼻茸(はなたけ)ともいいます。いくら鼻をかんでも改善しない鼻づまりの原因になります。

●疲労感や集中力の低下
慢性副鼻腔炎を放置すると、慢性の頭重感、疲労、集中力の低下をともない、日常の生活の質に影響が出る こともあります。

●中耳炎と髄膜炎
さらに炎症が周囲に波及した場合、中耳炎や目の炎症を来たしたり、髄膜炎の原因になることもあります。

副鼻腔炎の診断

●耳鼻科による検査
副鼻腔炎の専門科は耳鼻咽喉科です。鼻鏡などで鼻腔粘膜の変化を調べたり、鼻からの分泌物から原因となっている細菌の種類を調べます。アレルギー性鼻炎が疑われる場合には、原因となるアレルゲン物質の検査もします。

●放射線科での検査
レントゲン写真(副鼻腔単純X線検査)では、骨で囲まれた部位の病変の診断をするのに限界があるため、重症例や合併症が疑われる場合には、より多くの情報が得られるCTやMRI(ドイツではMRT)検査による画像診断が行われます。

年齢層0~5歳の副鼻腔炎患者の鼻汁からの検出菌

副鼻腔炎の治療

●薬による治療
軽症の急性副鼻腔炎の場合は、ウイルス感染が主であるため抗菌薬は用いられませんが、中等症以上ではウイルス感染の後につづく細菌感染が原因であることが多く、副鼻腔の粘膜を正常化する薬とともに抗菌薬が用いられます(「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン」より)。頭や顔の痛みに対しては、鎮痛解熱薬が用いられます。アレルギー性鼻炎の人はその治療も必要です。

●鼻の吸引・洗浄
鼻腔内に溜まった鼻汁を吸引。または、鼻から管を入れて鼻腔や上顎洞も洗浄します。

●手術による治療
薬で良くならない場合には、内視鏡を使った副鼻腔の手術(ESS)が行われ、副鼻腔内の肥厚した粘膜や溜まった膿を取り除きます。カビの一種である真菌(Pilz)が副鼻腔炎の原因である場合にも手術が勧められています。

●日常で気をつけること
風邪や鼻炎を症状が軽いからといって放置しないことが大切です。睡眠不足、疲労、過度のストレスは、感染に対しての免疫力を低下させますので、規則正しい生活を心がけてください。鼻汁はズルズルとすすらずに、小まめにかむよう心がけましょう。ただし、子供の場合は、あまり勢いよく鼻をかみ過ぎると、耳管に鼻腔内の細菌が入って中耳炎の原因にもなりますのでご注意ください。副鼻腔炎を繰り返す人には、「鼻うがい」も効果的です。

日常生活上の留意点

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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