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ビオワインの世界 2 ビオ農法とは

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今回は、前回大きく3つに分けたワインの農法をごく簡単にご紹介しましょう。

● 通常農法:
非持続的で、生物の多様性が失われていく農法。
・化学合成農薬、化学肥料を使用する。

● ビオ農法:
できるだけ持続可能な生態系、生物の多様性を守ろうとする農法。
・化学合成農薬、 化学肥料は使用しないが、伝統農薬(ボルドー液他)などは使用する。
・オーガニックな植物保護剤と堆肥を使用する。
・遺伝子組み換えを行わず、遺伝子組み換えがなされたものも使用しない。

● ビオディナミ農法:
ビオ農法をより徹底し、持続可能な生態系、生物の多様性を取り戻そうとする農法。
・化学合成農薬、 化学肥料は使用しないが、伝統農薬(ボルドー液他)などは使用する。
・独自の方法で造られるオーガニック調剤(プレパラート)と堆肥を使用する。
・遺伝子組み換えを行わず、遺伝子組み換えがなされたものも使用しない。
・宇宙的側面からもアプローチし、天体の運行を考慮に入れて作業に従事する。

すべてのルールを網羅したわけではありませんが、違いが少し明確になったでしょうか?

上記で「化学合成農薬」と一括して表現したものは、防カビ剤(Fungizid)や除草剤(Herbizid)、殺虫剤(Insektizid)、殺菌剤(Bakterizid)などを指します。ビオは、このような人工的な薬剤と化学肥料を拒否しますが、カビ病防護の伝統農薬である石灰硫黄合剤(ドイツの造り手の間では単に硫黄=Schwefelと言われることが多い)とボルドー液(生石灰と硫酸銅の調剤で、単に銅=Kupferと言われることが多い)の使用は、通常農法より少ない分量で認められています。

ただ、石灰硫黄合剤については炭酸水素ナトリウム、すなわち重曹(Natriumbikarbonat)や炭酸水素カリウム(Kaliumbikarbonat)、フェンネルオイル、 ケイ酸(Kieselsäure)などで代用できるため、使用していない醸造所もあります。しかし、ボルドー液に代わる有効な処方はまだなく、 実験的に使用されている酸化アルミニウム(Tonerde)、 藻類(Algen)はあまり効果がないそうです。

ビオの認証の有無にかかわらず、志の高い造り手たちは、ぶどうをしっかり守りつつ、土壌の汚染を最低限にするため、天候を睨みながら減農薬に挑戦しています。例えば、除葉などの手作業を行い、フェンスの通気性を良くしてカビ病に対処しているのです。ビオの認証を取得していなくても、よりナチュラルなワインを造り、次世代にできる限り健康な土壌を残したいという想いは、多くの醸造家に共通しています。

また、自然の堆肥やコンポストには即効性はありませんが、継続することで土壌は活力を取り戻していきます。健康な土壌ではぶどうの成熟や収穫量のバランスが保たれ、自然の酵母が充分に生育し、よりテロワールを反映したワインが生まれます。ぶどう自体も病気に罹りにくくなり、農薬を撒く人間の健康も守られるのです。

 
Weingut Alexander Laible
アレクサンダー・ライブレ醸造所(バーデン地方)

アレクサンダー・ライブレ醸造所(バーデン地方)
アレクサンダー&コリンヌ・ライブレ夫妻と
長男のルイスくん
 国立ヴァインスベルク研究所付属専門学校を卒業後、モーゼル地方のアルベルト・カルフェルツ醸造所で2年にわたって栽培・醸造責任者を務めた後、コンサルタントとして独立、複数の醸造所のワイン造りを指導した。その後、兄が父親の醸造所を継いだため、アレクサンダーは個人で醸造所を興す。ファーストヴィンテージは2007年、29歳のときだった。母親が自然に対する繊細な感覚の持ち主で、古来の農法を勉強し、常に月の満ち欠けに留意しながら夫のワイン造りを支えてきたという。アレクサンダーは母の影響でビオディナミという概念を特に意識することなく、本能的に自然に寄り添う農法を実践するようになった。使用している農薬はオイディウム(ウドンコ病)対策の石灰硫黄合剤のみ。それ以外は、すべてビオディナミ調剤を使用している。肥料は春先にごく微量の鉱物肥料を使用、その後はレグミノーゼン(マメ科植物)の種を蒔き、植物が窒素を取り込めるようにしている。アレクサンダーはビオ団体に所属せず、EUの認証も取得していない。彼のように現段階で認証を取得していなくても、ナチュラルなワイン造りを実践している造り手は少なくない。

Weingut Alexander Laible
Unterweiler 48, 77770 Durbach
Tel. 0781-2842380
www.weingut-alexanderlaible.de


2012 Weißer Burgunder SL*** trocken
2012年産 ヴァイサーブルグンダー SL(セレクション)*** 辛口 11.00€

ワイン アレクサンダーのワインは、初ヴィンテージがすでにハイレベルのコレクションだった。2009年版「ゴーミヨ・ドイツワインガイド」では、新人賞に相当する「Entdeckung des Jahres」を受賞し、注目を浴びた。彼にとっては、畑の格付けも糖度の高低を基準とした品質等級も重要ではない。「畑仕事においても、醸造においても、非常に上手くいったワインに、最高の3つ星を与えている」と言う。「テロワールよりも人」が彼の信条だ。ヴァイサーブルグンダーSL***は独自評価で3つ星。ナッツの香りが魅力的な、みずみずしい味わいの逸品で、酸味、フルーティーさ、ボディーのバランスも絶妙。収穫時の完璧に熟したぶどうの質感が感じられるワイン。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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