ジャパンダイジェスト

ゼクトの世界へ 4 ゼクトの味わい

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ゼクト造りにおける最終段階に、デゴルジュマン、そしてフェアザントドサージュ(単にドサージュとも言います)の注入という工程があります。デゴルジュマンとは、伝統的瓶内発酵法で作られるゼクトの瓶口に集められた酵母の澱を取り除く作業。ドサージュとは、ゼクトに甘みを加えるリキュールのことで、ワインにサッカロース(ショ糖)、あるいはぶどうのモスト(圧搾した果汁)を溶かして作ります。

最新のゼクトの生産ラインでは、瓶口を凍結液に浸し、そこに集められた酵母を凍らせた後、ぬるま湯で洗い、ボトルを一時的に45度の角度に傾けて栓(王冠)を抜き、凍結した澱をボトル内の圧力の助けを借りて取り除きます。その後、ボトル内のゼクトの内容量を調整し、味わいに応じてドサージュを加えます。

デゴルジュマンの際には、設備や泡の状態、温度などの条件により、15~50mlのゼクトが瓶から流出しますが、生産ラインは流出したゼクトを集め、不足分を補充できる構造になっています。集められたゼクトだけでは足りない場合は、デゴルジュマン後の同一のゼクトをボトルごとラインに組み入れ、そのボトルからダイレクトに不足分のゼクトを補充することもできます。甘口のゼクトの場合は、加えるドサージュの量が増えるため、ゼクトの量をさらに減らすこともあります。

ゼクトはドサージュを加えることで、その味わいが完成します。2次発酵を経て造られるゼクトは、そのままではきりりとした辛口であるため、ドサージュを加えて様々な味わいのバリエーションを作るのです。ゼクトの味わいはワインと少し異なり、以下のように分類されます。

ゼクトの味わい残 糖
ブリュット・ナチュレ 0~3g/l
エクストラ・ブリュット 0~6g/l
ブリュット 0~12g/l
エクストラ・トロッケン 12~17g/l
トロッケン 17~32g/l
ハルプトロッケン 32~50g/l
マイルド 50g/l以上

ブリュット・ナチュレはドサージュ・ゼロとも言われ、ドサージュを一切加えないピュアな味わいのゼクトで、近年人気が出ています。

ゼクトは酵母の澱と接触している限り、品質は安定しています。ヴィンツァーゼクト(詳細は2015年1月9日発行・993号を参照)の場合は、瓶内での酵母の澱との接触期間が最低9カ月と決められていますが、意欲的な造り手たちは、優れたヴィンテージのゼクトを、3年、5年、あるいは10年と、長期間にわたり寝かせてからデゴルジュマンを行い、特別なゼクトとしてリリースすることもあります。

デゴルジュマン後は熟成に拍車がかかります。醸造家たちは、デゴルジュマン後1~3年くらいの間に味わうようにと勧めています。品質と保存状態が良ければ、デゴルジュマン後、多くの年月を経たゼクトでも、美味しくいただけることがあります。最近ではデゴルジュマンを行った年月をシールなどで表示している醸造所もあります。

 
Weingut Josef Biffar
ヨーゼフ・ビファー醸造所
(プファルツ地方)

徳岡史子さん
徳岡史子さん

ダイデスハイムの名門、1879年創業のヨーゼフ・ビファー醸造所が、魅力的なワイナリーに生まれ変わった。醸造所を刷新したのは、同醸造所の社長で自らも醸造家である徳岡史子さん。「第1の目標は美味しいワインを造り続けること。第2の目標は日本の食文化とドイツのワイン文化を繋ぎ、新たな食文化を創造すること」と語る徳岡さんは、2014年に醸造所(ヴィラ・カタリーネンビルト)に、ヴィノテークと和食レストラン「fumi」を相次いでオープンした。コンセプトは、「ドイツワインを楽しむことを主体とした和食レストラン」。冷涼な気候から生み出されるデリケートなドイツワインと、四季折々の海の幸と山の幸に恵まれた日本で生まれた和食は相性が良い。徳岡さんは両文化の架け橋として、このベストマッチングをさらに広めたいという。

徳岡さんの会社は、1989年に一時閉鎖されたライヒスラート・フォン・ブール醸造所を再建し、2013年末の経営権の契約終了まで4半世紀にわたり、その伝統と名声を守り抜いた実績がある。今後はヨーゼフ・ビファー醸造所を育てつつ、プファルツ地方のワイン文化と食文化に新風を送り込んでくれることだろう。

J. Biffar Wein & Sekt GmbH
Restaurant Fumi
Im Katharinenbild 1
67146 Deidesheim
Tel. 06326-700120
www.josef-biffar.de


2011 Spätburgunder Rosé Brut
2011 シュペートブルグンダーシュペートブルグンダー
ロゼ ブリュット 12,00€

徳岡さんはガイゼンハイム大学卒業後、10年にわたり同大学に研究者として勤務したほか、醸造責任者のミヒャエル・ライプレヒト氏とフォン・ブール醸造所時代から16年にわたり共同でワイン造りを行ってきた経験を持つ。2人が蓄積したノウハウが、新生ヨーゼフ・ビファー醸造所の魅力的なコレクションに生かされている。主力製品は伝統製法のゼクトで、生産量の8割を占める。ご紹介するロゼは、優しいサーモンピンク色で、サクランボの香りと酵母由来の美しい熟成香、フルーティーさと奥行きのある味わいが魅力的。絶妙の収穫タイミングでベースワインのアルコール度数を低く保ち、軽快さを大切にしている。瓶内発酵後は酵母の澱と28カ月間接触させた。ロゼは女性に人気の高い商品だが、史子さんのロゼには、ワイン派の男性ファンが多いそうだ。


 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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