Hanacell

ヘキスト陶磁器工房

フランクフルト中央駅からSバーンで20分、戦禍を逃れた古い町並みが残るヘキストに、ヘキスト陶磁器工房(Höchster Porzellan-Manufaktur)があります。1746年に、マイセンの絵付け師であったレーベン・フィングらが創業したドイツで2番目に古い陶磁器工房は、マインツ選帝候の御用達窯に選ばれたほどの品質の高さと技術力を誇ります。

フランス革命戦争の影響を受けた1796年に閉鎖を余儀なくされ、生産を中断した時期があったものの、閉窯を惜しむ市民に支えられて1965年に再開。昔ながらの絵付け技術を厳格に再現し、現在でも伝統の製法で生産されています。陶磁器の裏には、マインツ選帝候の紋章である車輪のマークが描かれ、歴史と伝統を今に伝えています。

2002年から新本社として利用されている市立公園近くの工房では、定期的にワークショップや見学ツアーが開かれています。私が訪れたときには、特別販売イベントや絵付け体験が行われていました。工房内に併設されているショップでは、美しいモチーフが描かれた食器や置物が並んでいました。受注生産が主流のため、幻の逸品ともいわれるヘキスト磁器が特別価格で販売されているので、遠くからわざわざ買い付けに来る人もいるのだとか。

釉薬を塗って並べられた陶磁器
釉薬を塗って並べられた陶磁器。絵付け前でも、その美しいフォルムに見ほれます

絵付け体験コーナーでは、白磁器の皿やコップに思い思いのデザインを描くことができます。色見本を見ながら好きな模様を描いていくのですが、なかなか上手く線が引けません。店頭に並んでいたような細かいデザインを描くには、高い技術と豊富な経験が必要なのだと実感させられました。

工房見学ツアーでは、陶磁器が作られる全工程を詳しく説明しながら案内してくれます。陶磁器のベースとなるデザインを制作する作業室では、驚くほど生き生きとしたデッサンや、それを基に生み出された緻密なデザインの陶器が並び、機械による量産では実現できない素晴らしい職人技を垣間見ることができます。フランクフルトの有名な建築物や、ヘッセン州の紋章であるライオンをかたどったオブジェは1つひとつ手作業で成形され、その精密さと細かい作業を考えると、思わずため息が出るほどでした。

成形の後は、釉薬(ゆうやく)を塗って焼き上げます。巨大な金庫を思わせる窯の前では、実際に作動させた窯の中を見ることができました。「ゴー」という音を立てて火と熱風が噴き出る様子は迫力がありました。

最後は絵付け作業室へ。下書きもない白磁器に、フリーハンドで緻密で繊細な模様が描かれていきます。細かい筆さばきはまさに職人芸。逸品といわれる陶磁器は、伝統の技術と昔ながらの製法で、1つひとつ丁寧に仕上げられていました。

見本を参考にフリーハンドで緻密な絵を描いていく絵付け師
見本を参考にフリーハンドで緻密な絵を描いていく絵付け師

Höchster Porzellan-Manufaktur: www.hoechster-porzellan.de

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。
 
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