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沈黙のダイアローグ(Dialog im Stillen)

以前、盲目の人々の世界を疑似体験できる「暗闇の中のダイアローグ」(Dialogim Dunkeln)についてご紹介したことがありました(弊誌第847号、2010年12月17日発行)。この施設は、学校の授業の一環(日本での社会見学のようなもの)として取り入れられることも多く、大変好評を得ています。それを受けて、昨年9月24日に、「暗闇のダイアローグ」の施設内に、今度は、聾唖(ろうあ)者の世界を疑似体験できる「沈黙のダイアローグ」がオープンしました。

ハンブルク
「沈黙のダイアローグ」の施設は、
エルベ川中洲、旧倉庫街の一角にあります

ここでも「暗闇」のときと同様、訪問者を案内してくださるのは、実際に聾唖の人々。「暗闇」のときは、白い杖とガイドの声だけを頼りに歩き、足取りもおぼつかず、その漆黒の体験は大変衝撃的でした。しかし今回は、「外国で暮らしているし、言葉が通じない不自由さは耳が聞こえないのと同じようなものかもしれない。そう難しくはないだろう」と軽く考えていました。ところが、音のない世界での表現というのは、想像以上に集中力を要するものでした。

60分のツアーは、最初に外界の音を遮断するヘッドフォンを装着してスタートします。ガイドに続いて施設内に入ると、まずは手と指で影絵を作って表現するというセクションでした。幼い頃に影絵で遊んだ記憶のある人には、イメージしやすいと思います。続いて、顔の表情だけを用いて感情を表現するセクションですが、これは日本人の苦手とするところ。ガイドの人は、「顔の筋肉って、こんなに自在に動かせるものなのか」と感心するくらい、表情が豊かでした。聾唖の人にとっては、言葉に代わる自己表現の手段として、普段から大きなリアクションで喜怒哀楽を表現しているのでしょう。くるくると変わる表情が、とても魅力的に見えました。ほかには、その場で簡単な手話を習い、実際に会話してみるセクションや、ジェスチャーで様々なものを表現してみるセクションなどもありました。

ハンブルク
施設入口のロビー。ここで荷物を預け、グループでまとまって入場します

今回の体験を通して感じたのは、聾唖の人々は音を通じた伝達手段や表現手段がないために、それ以外の表現能力が自然と健常者以上に発達していくのだということ。私が訪問した際に、ガイドをしてくださった女性の本来の職業はダンサーだそうですが、床の振動で音楽を体感して踊っているのだそうです。自分に欠けているものにこだわって内にこもるのではなく、与えられているものを最大限に生かして、いきいきと生きている姿に感銘を受けました。

www.dialog-im-stillen.de
入場料 大人: 17ユーロ、子ども: 9.50ユーロ
(要予約)Tel: 040-3096340

井野さん井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?

 
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