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ベトナム仏教寺院で祝う旧正月

旧暦のお正月を祝うお祭りが1月30日夜、ハノーファー市内のベトナム仏教寺院Viên-Giác-Pagodeで開かれました。ドイツ国内には、ベトナム寺院が8カ所ありますが、中でもこの寺院は欧州最大です。お祭りには、市内はもちろん、遠方からも多くのベトナム人が訪れ、大盛況でした。来場者は、ざっと見ただけでも2000人以上はいたでしょうか。その中に、ちらほらとドイツ人の姿も見受けられましたが、ほとんどがアジア人で、まるでベトナムに来たかのような錯覚に陥りました。

旧暦の新年を迎える人々
旧暦の新年を迎える人々

お祭りは、旧暦の大晦日に当たる30日の夜10時に始まりました。まず、春を祝う獅子舞が披露されました。舞には物語があるようで、様々な登場人物が出てきて観客を魅了し、さらに赤と白の獅子が躍動的な踊りを繰り広げ、めでたさを演出します。続いてのプログラムは、子どもたちの踊りや演奏、大人たちの歌。民族衣装を着て踊る子どもたちは本当にかわいらしく、幼児からティーンエイジャーまで、この日のために一生懸命練習してきた様子がうかがえます。多少失敗しても、そこはご愛嬌です。司会もベトナム語のみで、会場はなんともアットホームな雰囲気。舞台に立つ人も観客も皆、心から楽しんでいる様子が伝わってきました。また、汁麺やお餅、饅頭なども販売されていて、もちろん日本のお正月とは雰囲気が異なるものの、どこか懐かしい感じがしました。

踊りを披露する子どもたち
踊りを披露する子どもたち

0時前になると、皆が一斉に上階の大広間へ移動。いくつもの仏像が置かれている部屋は線香の匂いに満ちていて、隙間なく人で埋め尽くされています。念仏が始まって荘厳な鐘の音が響き、新年を迎える用意が整いました。お経とともに、その場に高揚感と神聖さ、一体感が生まれます。遠い異国でほかの人たちと一緒に新年を祝うというのは、アジアならではの文化ではないでしょうか。このお寺は宗教という枠を超え、アジアの伝統や慣習を守りつつ、後世に伝えていく役割も担っているのだと思いました。

寄付により、1993年に完成したこの寺院では、毎朝夕お経が上げられ、誰でも参拝することができます。色鮮やかな仏像に、造花のデコレーション、念仏、お線香……。心の安らぎを求めてここを訪れるドイツ人も多いそうです。毎年8月の夏祭りには、欧州中からベトナム人が訪れ、ベトナムの食べ物や仏教用具などを販売する屋台がたくさん立ち並ぶほか、歌や劇などの催しが行われ、こちらも大勢の人出で賑わいます。今年は8月8日~10日に開催される予定です。

Viên-Giác-Pagode
http://deutsch.viengiac.de

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、ドイツ語通訳。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。

 
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