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Do. 06. Aug. 2020

「そこに火星があるから」 宇宙飛行士トーマス・ライター

宇宙に行くとはどういうことなのか、上空400キロで、何を考えたのか。1995~96年と2006年の2回、それぞれ半年間宇宙ステーションに滞在した宇宙飛行士トーマス・ライター氏の講演会が11月7日、ハノーファー大学の「文学サロン」であり、ライター氏が感じた宇宙の魅力に400人が耳を傾けました。

ライター
宇宙での体験を語ったライター氏

ライター氏はドイツ空軍パイロットを経て、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士に応募。難関を勝ち抜き、エンジニアとして宇宙に飛び立ちました。宇宙ではチームワークが重要なので、人柄の良さはお墨付き。宇宙遊泳をした最初のドイツ人でもあります。なぜ宇宙に行くのか、との質問にライター氏は「知識を深めるため。地平線の向こうを発見することは全人類の課題」と答えました。宇宙から地球を眺めた時のことは「ふと外を見ると大陸が動いているのが見えた。その光景は想像の域を超えていた」とその感動と高揚感を語り、「400キロの高さから見ると、大気圏は薄く、地球はとても壊れやすくみえる。なのにどうして、地球上では自分たちで苦しめるような戦争や環境破壊をしているのか」とも言います。

司会者の「地上で飢えている人がいるのに、宇宙に行くのはどうかという声もあるが」という問いには「宇宙では、6〜7割の時間を学術研究に費やしている。無重力状態でしかできない研究ばかり。例えば重力や光など条件を変える実験を通して、根が早く伸びる植物が開発できれば、砂漠でも育てられる」と話しました。つまり、地球上の問題を解決する鍵が宇宙にはあるというのです。また、火星に人類が到達することを願っており、火星を目指す理由として「①知識を得る②生物がいたかもしれない③そこに火星があるから(『なぜ山に登るのか。そこに山があるから』と同じ)」を挙げ、会場がどっと湧きました。

ライター氏の話を聞いて感じたのは、宇宙に行った人を通して、私たちも宇宙を体験できるのだということ。飛行をした人は全世界で550人ほどととても限られていますが、その経験は人類の共有財産です。直接体験しなくても、話を聞くことで追体験でき、それが社会に影響を与えるのです。

会場
満員の会場

この催し「文学サロン」は、もともと90年代初めにハノーファー大学ドイツ学ゼミの学生有志が始めたもの。同サロンは、文学と文化を人々に伝える役割を自認するもので、様々な分野の第一人者を招いて講演会を開いています。司会者が質問するという形なので、練った質問から思わぬ回答が引き出されるのが魅力です。いつもは忘れている、けれど生きるうえで大事なことに、ふと触れたような気がしました。

文学サロン:www.literarischer-salon.de

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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