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空き地から生まれた地域の拠点 「シティ・ファーマーズ」

ライプツィヒ東部の大きな交差点の一角、ぽっかりと空いた敷地内に、ポニーや豚、うさぎや鶏などの小動物が住んでいる場所があります。ここは約1000㎡ もの空き地をうまく利用して近隣住民が作った、地域の拠点「まちの牧場 シティ・ファーマーズ」。毎日午後3時から一般開放されており、誰でも無料で入園することができます。

遊び場
緑豊かな敷地内に設けられている遊び場

ここにいる動物たちは保健所から譲り受けたり、引き取り願いを受けたりなどして、少しずつ増えてきました。幼稚園や学校が終わった後に子供たちが集まり、それぞれが面倒を見ている動物に餌を与えたり、掃除をしたりして、遊ぶだけでなく都市の中にいながら生きた動物たちに触れられる大切な場所になっています。行政が管理する公園でも入場料を徴収する商業地でもなく、市民が集まって手作りで運営している場所のため、関わりたい人は誰でも一緒に活動に参加することが出来ます。

鶏やヤギ
鶏やヤギなどおよそ30匹の小動物が住んでいる

ここは、子供たちのためだけの場所ではなく、近所の人たちが動物の餌として余った野菜を持ち寄ったり、近くのスーパーが期限切れの果物や野菜を提供するなど、地域の人たちが様々な形で関わっています。さらに、フリーマーケットや夏合宿、ハロウィンやクリスマスなどのイベントも実施し、集まる寄付で水道代など牧場の運営費用を賄っています。

始まりは、長期間に渡って放置されてきた広大な空き地を、子供たちのために使えないかと地域に住む親たちが土地の所有者に交渉したのがきっかけ。そして暫定的に無料で借りることが可能になりました。ところが2年、3年と経って期限が切れてしまう頃になっても、土地の利用計画が進まないため、シティ・ファーマーズは現在もそのまま残っています。

ここで開発を(幸運にも)妨げているのは、大きく育っている木々。ドイツでは木の直径が規定よりも大きな場合、簡単に切り倒すことが出来ません。これまでに、ホテルやショッピンセンターなど幾つもの計画が立ち上がっては、この大木たちを残さなければならないために案が消えていきました。

近年は、「個人で所有する庭」対「公共空間である公園」という2対立ではなく、シティ・ファーマーズのような、公私の間にあって「みんなで共有」するけれども、「責任を取る人たちが基本的な管理をする場所」が増えてきています。多様な人たちが共に関わることができる、適度に開かれた場所が、これからの都市生活の鍵になりそうです。

シティ・ファーマーズ:www.leipzig-leben.de/cityfarmers-leipzig-derstadtbauernhof

ミンクス 典子
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de
 
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