日本古来の音楽でありながら、現代の日本人には、ほとんどなじみのない雅楽。しかし、2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録されています。このほど、その雅楽に関する講演会がミュンヘン独日協会の主催で行われました。来場者は30名程度で、日本人・ドイツ人が約半数ずつでした。講師を務めたのは石田多朗さん。石田さんは2024年、ハリウッド製作のドラマ「SHOGUN」に、音楽分野で参加しています。彼自身は、西洋音楽の作曲家としてキャリアを始めましたが、10年前に雅楽と出会い、その魅力に触れて、雅楽の研究を深めることになったそうです。
昔と変わらない装束で奉納される舞
講演は、スライドとビデオを用いて、雅楽に使われる楽器の説明とその音の紹介から始まりました。雅楽は約1300年の歴史を持つ宮廷音楽で、音楽と舞が結び付いており、音楽も衣装もこの1300年間ほとんど変化していないとのこと。すごいですね。ここで石田さんは、雅楽団体の演奏する短い1曲を聴かせてくれました。
雅楽が演奏されるようになった平安初期、現代のように騒がしい音に溢れていなかった世界で、日本人たちは、水の音、風の音、鳥や虫の鳴き声を聞いて暮らしていました。雅楽は、それらの音を表現したものだそうです。西洋音楽では、クリアな音が求められますが、尺八などの日本の楽器は、息の量が多く、不安定で、不明瞭な音が要求されます。これも、自然界には一定のピッチの純粋な音は存在しないからとのこと。
1300年近く受け継がれてきた雅楽の演奏
また、現代の音楽はコンサートなどがあり、演奏者と聴衆が存在することが想定されています。ところが雅楽は、人間も自然の一部であり、聴衆を必要としない。そのことを聞いて衝撃を受けました。さらに、西洋音楽には決まった拍子があり、オーケストラなどでは指揮者が必要です。しかし雅楽には指揮者が存在しません。それぞれの演奏者が場の一部に融合し、お互いの営みの中で音楽が流れていくのです。石田さんが「そもそも自然界の中で、水にしても、風にしても、一定のテンポで流れる音なんてないでしょう」と語った時、これまた衝撃を受けました。自然に融合して人間が存在するという思想は、東洋や日本に特有なのかもしれません。
講演者の石田多朗さん
講演を聞き終わった後、石田さんは「1回目に聞いた時との違いを味わってみてください」と言って、もう一度、初めに聴いた曲を聴かせてくれました。そこには豊かな自然がありました。ミュンヘン独日協会がこのような魅力的な講演会を企画してくださったことに、心から感謝して帰路につきました。
イエス・キリストに出会って、声楽専攻から牧師に転身。2022年よりミュンヘン日本語キリスト教会牧師。今でも少女マンガ、オペラ、ダンスは大好きです。 www.muc-japan-christ.com/



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