私は毎年春先に「未来へつなぐお味噌作り」というワークショップを開催しています。日本にルーツを持つ親子や日本食に興味のあるドイツの方々と一緒に、オーガニック材料でお味噌を仕込む小さな会です。今年はより持続可能なお味噌作りを目指しており、私が住んでいるドイツ南西部で良質な塩を探していました。今回は、ハイルブロン郡にあるバート・ラッペナウ(Bad Rappenau)という街に向かうことにしました。
潮風を生み出す巨大フィルター
街の中心部にあるザリーネン公園に車を停めると、目に飛び込んでくる黒い巨大な壁。近づいてみると、全長100メートルの木枠に無数の小枝が組まれ、その隙間を塩水がしたたり落ちています。これはGradierwerkといって、地下約180メートルの岩塩層からくみ上げた塩水を自然蒸発させ、人工的に潮風を生み出す巨大なフィルター装置です。
塩水の微粒子を含んだ空気は呼吸器疾患への療法効果があるとされており、フィルターの前に設置されたベンチではたくさんの人が思い思いにリラックスしています。咳が長引いていた9歳の息子と共に、私と夫も思わず深呼吸。まだ肌寒い季節ではありましたが、目を閉じるとまるでビーチにいるような感覚になりました。心地良く手入れされた公園を少し歩いた先には、水車装置が保存されています。これはまるでハムスターの回し車のように、人が内側から足で踏んで地下の塩水を地上にくみ上げるための仕組みで、当時の過酷な重労働の現場を垣間見れました。
ハムスターの回し車のような水車装置
バート・ラッペナウで採取される塩水の濃度はなんと約27%。死海の塩分濃度である約30%に迫る、ほぼ飽和状態の塩化ナトリウム水なのだそうです。ドイツの製塩の歴史はケルト時代にまでさかのぼり、塩はかつて「白い金」と呼ばれていました。Hall(ハル)やSalz(ザルツ)を含む地名は塩の産地だった名残で、シュヴェービッシュ・ハル、ザルツブルク、ハルレ・アン・デア・ザーレなどが塩の産地だったことが分かります。
心地良く整備された公園
現在ドイツは世界第4位の塩生産国ですが、その大半は工業用。かつて南西ドイツ各地で栄えた製塩所は、主に経済的な理由から19~20世紀に次々と閉鎖され、今では塩水を温泉保養に活かすBad(バート)の街として新たな役割を担っています。バート・ラッペナウもその一つで、残念ながらお味噌作りに使えそうな地元塩との出会いは叶いませんでした。ただ、ザリーネン公園の近くにあるゾーレ&サウナパラダイスという施設では塩水浴ができるとのこと。現在は改装工事中でしたが、海のないドイツ南西部で塩水浴ができるということを知れたのは大きな収穫でした。
南ドイツの黒い森の片隅で、自然と調和した暮らしを実践中。味噌や麹を通じた伝統食の紹介やオーガニックの魅力の発信、親子で楽しめる味噌作りワークショップを開催。ローカルな暮らしの日々をインスタグラムでつづっています。
@schwartzwaldtagebuch



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