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頭痛のあれこれ - 何が原因、対応は?

最近、生理前になると頭が痛くなることが多くなりました。夫は仕事で忙しい日が続くと頭が痛くなるようです。この場合、同じ頭痛薬を使っても良いのでしょうか?

Point

  • 頭の筋肉の収縮から生じる緊張型頭痛
  • 脳の血管の異常拡張で起こる片頭痛
  • 女性の片頭痛は、しばしば月経サイクルと関係
  • 後頭部の神経がビリッとする後頭神経痛
  • 頭部打撲後、起こる慢性硬膜下血腫
  • 副鼻腔炎で生じる額付近の頭痛
  • 痛み止めの連用でおこる、薬物乱用頭痛

頭痛の原因はさまざま

●「頭痛持ち」の三大頭痛

頭痛はドイツ語でKopfschmerz、Kopfwehといいます。①日本人に多い「緊張型頭痛」、②拍動性に痛む「片頭痛」、③片目周囲の激しい痛みをを繰り返す「群発頭痛」の三大頭痛があります(後述)。

● 鼻や目の病気に伴う頭痛

副鼻腔炎(Sinusitis)では、額や頬の痛みが続きます(ドイツニュースダイジェストNr.1022を参照)。眼圧が急に上昇する「急性緑内障発作」では、激しい眼痛、頭痛、視力低下がみられます。

● 脳の病気による頭痛

脳動脈瘤の破裂による「くも膜下出血」、脳血管が破れる「脳出血」、頭部外傷の後の「慢性硬膜下血腫」、脳腫瘍の脳圧亢進に伴う頭痛があります(後述)。

● 風邪や二日酔いによる一時的な頭痛

風邪をひくと頭の三叉(さんさ)神経の刺激と炎症性物質により痛みが生じます。二日酔い(Kater)の頭痛には、アルコールの代謝で作られるアセトアルデヒドという有害物質が関与します。アイスクリームを食べて頭がキーンとする痛みは、「寒冷刺激による頭痛」の典型例です。

●「過ぎたるは及ばざるが如し」の意外な頭痛

毎日のように飲み続けている痛み止めが、逆に頭痛の原因となることがあります。「薬物乱用頭痛」と呼ばれ、注意が必要です。また、軽い頭痛を軽減させるコーヒーや緑茶も、毎日何杯も飲む愛飲家が突然に控えると「カフェイン離脱頭痛」という頭痛を起こすことがあります。

緊張型頭痛(Spannungskopfschmerz)

● 筋肉の過緊張が原因

肩(Schulter)や首(Nacken)の筋肉の過緊張が、頭の筋肉にも波及して頭が痛くなります。長時間のデスクワーク、不自然な姿勢、身体的・精神的なストレス、過労などが関係します。

● 締めつけられるような痛み

頭を圧迫されたような、チクチクするような痛みです。疲労が増す時間帯や季節に発症します。

● マッサージが効果的

筋肉の収縮で血流が悪くなって痛みを生じるため、後けい~肩~上背部のマッサージが効果的。十分な睡眠、上半身のストレッチ体操、仕事の合間の適宜な休憩が予防の基本です。痛みには鎮痛薬(Analgesikum、Schmerzmittel)を用い、医療マッサージは医師の指示書により理学療法科(Physiotherapie)で受けられます。

片頭痛(Migraine)

● 日常生活に支障をきたす痛み

頭の片側または両側に、拍動性の痛みが繰り返し現れます。吐き気を伴い、動くと痛みが増し、光・音・臭いに過敏になります。暗い部屋でじっと耐えなければならず、日常生活に支障が出ます。

● 前触れの症状 Aura

人によって片頭痛の発作前にギザギザした「光」が見えたり(閃輝暗点)、ピカピカと目が眩しくなることがあります。これは、片頭痛の前兆です。

● 片頭痛の原因と誘因

北里大学の全国調査によると日本の成人の8.4%が片頭痛持ち(1997年の英文医学雑誌Cepharalgiaより)、特に20〜40歳代の女性に多く発症し、月経との関連がみられます(後述)。脳の血管の異常な拡張が原因であったり、月経、睡眠不足、ストレス、疲れ、天候の変化などが誘因となります。

● 片頭痛の治療

特効薬の「トリプタン製剤」(例えばSumatriptanなど)が使われます。血管収縮作用のある「エルゴタミン製剤」も効果があります。軽症の痛みに対しては鎮痛薬が使われますが、中等症以上の片頭痛に対しての効果は限定的です。

● 子どもの片頭痛

①痛みの時間が短い、②腹痛を伴うことが多い、③休むとすぐ良くなる、④発作後はケロッとしているのが特徴(ドイツニュースダイジェストNr. 974を参照)。繰り返し頭痛や腹痛を訴えている場合は、一度小児科の専門医に相談しましょう。

群発頭痛(Cluster-Kopfschmerz)

● えぐられるような痛み

「片目の奥がえぐられるような」激しい頭痛です。数週から数カ月の一定期間にわたり、毎日ほぼ決まった時間(夜間が多い)に現れ、痛みを伴う側の目の充血、涙、鼻水、鼻づまりなどを伴います。頻度は1000人に1人で、20〜40歳代の男性(女性の数倍)に多い頭痛です。

● アルコールが誘因となることも

目の後ろ側の血管の異常な拡張と炎症が原因とされます。アルコールが発作を誘発することが多く、群発頭痛の患者は飲酒を控えることが大切です。

月経サイクルと頭痛

● 排卵後と生理中に多い片頭痛

前述の片頭痛も生理周期と関係します。排卵直後と生理(Menstruation、Monatsblutung)が始まり、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急に減った際に、ストレス、睡眠不足、過労が重なると片頭痛が起きやすくなります(2016年の米国神経学会誌 Neurologyの論文より)。

● 月経困難症(Menstruationsbeschwerden)と頭痛

生理中の強い下腹部痛、腰痛、腹部膨満、頭痛、疲労感などの月経困難症、子宮内膜で作られるプロスタグランジン(PG)の合成を抑える非ステロイド性抗炎症薬(いわゆる鎮痛薬)が有効です。

● 月経前症候群(PMS)と頭痛

女性ホルモンの大きな変動により生じる月経前症候群(Prämenstruelles Syndrom、PMS)でも、頭痛がみられます。痛みに対す鎮痛剤や、低用量ピルで女性ホルモンの変動をなくすことで身体症状が軽快します(日本産婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン 2017」より)。

頭の神経痛

● 後頭神経痛 Okzipitalneuralgie

後頭の大後頭神経や小後頭神経の支配領域で、数秒から数分間にわたって突き刺さる鋭い痛みを感じます。数日中に自然に治る場合がほとんどです。痛みに対しては鎮痛薬、そしてときには抗けいれん薬や抗うつ薬が用いられます。

危険な症候性頭痛

危険な頭痛

病名状況・症状
クモ膜下出血 脳動脈瘤の破裂
慢性硬膜下血腫 頭の外傷後
脳出血 しびれ、麻痺を伴う
脳腫瘍 神経症状、脳圧亢進症状

● クモ膜下出血 Subarachnoidalblutung、SAB

脳動脈瘤の破裂が原因です。突然、頭を野球バットで殴られたような強い痛みで発症します。死亡率が高く、一刻を争う治療が必要です。未破裂脳動脈瘤は頭のMRA(MRT mit Angiographie)で事前に見つけることができます。

● 慢性硬膜下血腫 Subduralhämatom、SDH

頭をぶつけた後、数週間から2〜3カ月の間に脳の硬膜と脳の表面の隙間にできる血腫です。原因不明の頭痛が続き、頭部打撲や外傷が思い当たれば、CTかMRI(MRT)検査を行います。

● 脳出血 Intrazerebrale Blutung、ICB

突然の頭痛に加えて、手足の麻痺やしびれを伴う場合は脳出血を疑います。高血圧や糖尿病が危険因子となります。

● 脳腫瘍 Hirntumor

腫瘍ができた部位と関係する神経症状と脳圧亢進による突然の嘔吐や頭痛がみられます。CTやMRTにより診断されます。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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