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ロンドンのゲストハウス
Sa. 19. Okt. 2019

ワイン展から学ぶこと

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現在、東京の国立科学博物館で「ワイン展ーぶどうから生まれた奇跡ー」が開催されています。11月下旬に一時帰国したとき、東京に1泊する機会があり、同展に駆けつけました。

ワインについては通常、店頭試飲、見本市などのイベント、ワインメーカーズ・ディナー、醸造所見学を通して、より深く知るチャンスがありますが、博物館という場でワインがどのように紹介されるのか、興味があったのです。「ワイン展」という試みは、私の知る限り欧州では例がないように思います。

展覧会は、ワイン造りの四季を疑似体験できるコーナー「ワイナリーに行ってみよう」「ワインの歴史」「ワインをもっと楽しむ」の3部構成。科学と歴史についてのウエイトが高く、未知の情報をいくつも得ることができました。日本人の視点で構成された展覧会であることが、私にとってとても新鮮でした。

ワインの酵母や貴腐菌を顕微鏡で見たのは初めてで、酒石酸から造られるロッシェル塩が、太平洋戦争中にソナーの素材として軍事利用されていたことも知りました。香気成分も代表的なものが分かりやすく解説され、理系の知識を得られる、刺激的な体験でした。

歴史のコーナーでは、紀元前6000年から現在までの、8000年に及ぶワイン史がコンパクトにまとめられていました。欧州では、紀元前6000年に西アジア、南コーカサス地域に存在したという野生ぶどうの西進が話題になりますが、それは東進もしており、シルクロードや海路を経て日本に到達しています。

タクラマカン砂漠の南のニヤ(尼雅)の遺跡には、約2000年前の漢の時代のぶどう畑の遺構があるそうで、西方で発展したぶどう栽培が導入されていたことを物語っています。唐の時代(7~10世紀)の太宗はトルファンからワインの製法を導入していたそうです。

日本では奈良時代の平城宮跡から野生ぶどうの炭化種子が見つかっていますが、畑の痕跡などは見つかっておらず、ワインが飲まれていたかどうかは不明です。しかしながら、葡萄文様が愛され、奈良時代から「葡萄唐草文」のモチーフが屋根瓦などに使われています。

興味深かったのが、大航海時代の日本へのワインの伝播です。16世紀にフランシスコ・ザビエルがキリスト教の布教のために来日して以来、ワインは各地の大名たちに献上品として届けられました。その後、キリスト教布教が禁じられ、鎖国時代には出島でのオランダとの交易だけが例外的に認められます。出島のオランダ商館での宴会などでは、ワインが振る舞われていたことがわかっており、出島の発掘調査により、ワインボトルやワイングラスが見つかっています。

日本滞在中は、長崎の出島にも足を運びました。出島の復元は着々と進んでおり、既に多くの建築物と展示品が見学可能で、2017年には橋を含む全てが完成します。出島のオランダ商館は、オランダ東インド会社の支店で、1641年から1859年まで貿易が行われていました。ところで、オランダ人は1652年に南アフリカのケープタウンを植民地とし、 1659年に同地で初めてのワインが造られています。展覧会では南アフリカについての言及はありませんでしたが、長崎では、欧州産以外に、ひょっとすると南アフリカ産のワインも飲まれていたかもしれません。

(「ワイン展」は2016年2月21日まで開催。)

 
Weingut Hans Lang
ハンス・ラング醸造所(ラインガウ地方)

カロリン、ギュンター、ライナー
新生ハンス・ラング醸造所を率いるカウフマン氏とラップスさん

1953年創業のハッテンハイムの醸造所。2009 年からビオに移行、2012年からエコヴィン会員。2013年から新オーナーとなったのは、スイスの企業家ウルバン・カウフマン氏。カウフマン氏は元スイス、アッペンツェルのチーズ生産者。スイスの醸造所で修業した後、ガイゼンハイム大学の聴講生となり、ワインの知識を深めた。カウフマン氏のパートナー、エファ・ラップスさんはVDP前社長。醸造所のマーケティングを一手に引き受けている。ハッテンハイムの特級畑ヴィッセルブルンネン、ハッセルなどに畑を持ち、前オーナー、ハンス・ラング氏の助言を受けつつ、主に高品質のリースリングを生産。また買い付けたぶどうから、秀逸なゼクトコレクションもリリースしている。カウフマン氏は、趣味の伝書鳩の飼育について語るユニークなワインセミナーも実施している。

Weingut Hans Lang Rheinallee 6
65347 Eltville-Hattenheim
Tel. 06723-2475
www.weingut-hans-lang.de


ゼクト「ピノ・エクストラ・ブリュットSekt Pinot extra brut
ゼクト「ピノ・エクストラ・ブリュット」 13.80 €

ウルバン・カウフマン氏は後継者のいなかった同醸造所を継いで以来、伝統製法のゼクトコレクションにも力を入れ始めた。現在生産しているのはリースリングほか4種類。ご紹介するピノ・エクストラ・ブリュットは、ハッテンハイムとハルガルテンにある複数の畑で栽培されているヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダーのブレンド。瓶内で酵母と15カ月接触させたもの。熟した洋梨やナッツ、ビスケットの香りが立ち上る、ふくよかでクリーミーな味わいのゼクト。


 

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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